胃カメラ検査でピロリ菌の感染が見つかることがありますが、一体どのように感染していくのでしょうか。
今回は、ピロリ菌の感染経路について解説します。
ピロリ菌とは
ピロリ菌は、正式名称を「ヘリコバクター・ピロリ」といい、胃の粘膜に定着する菌です。
胃の中は強い酸性環境のため、通常の細菌は生存できません。しかし、このピロリ菌は「ウレアーゼ」という酵素を作り、胃酸を中和しアルカリ性にすることで生き延びることができます。
ピロリ菌は、胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍を引き起こすと考えられています。
ピロリ菌の感染経路
ピロリ菌の感染経路はまだ明確にわかっていませんが、口から胃に入る経口感染だと言われています。
主に以下のようなパターンが原因で感染すると考えられています。
井戸水などの汚染水から
ピロリ菌は、井戸水や土壌などの環境中に生息しているため、汚染された水や食べ物を介してピロリ菌を体内に取り入れてしまう可能性があります。上下水道の整備が十分でない地域や国では、ピロリ菌の感染率が比較的高いとされています。かつての日本においても、生水の摂取によってピロリ菌に感染する事例がありました。そのため、まだ上下水道が普及していなかった世代の方々(70歳以上)は感染率が高い傾向にあります。
しかし、現在の日本では上下水道の整備が進み、高水準の衛生環境が整備されているため、ピロリ菌の感染報告は大幅に減少しています。
親から子への口移し
親から幼い子どもへ食べ物の口移しや、スプーンなどの食器を共有することも感染の原因と考えられています。そのため、親がピロリ菌に感染していたという方は感染している可能性が高いです。
ピロリ菌は主に免疫力が未熟な5歳以下の乳幼児に感染することが多いとされています。幼児期には胃の酸度が低く、ピロリ菌が生存しやすい環境となっているためです。一度感染してしまうと、除菌治療を受けない限り感染は持続します。逆に、5歳までにピロリ菌に感染しなかった場合、その後感染するリスクは非常に低いとされています。
トイレ後の不衛生な手から
ピロリ菌に感染している人の糞便には、ピロリ菌が含まれていることがあります。トイレ使用後の手洗いを怠ったり、衛生状態が悪い環境にいると、間接的な経路でピロリ菌が口に入り感染する可能性があります。
ピロリ菌に感染しても自覚症状はない!
ピロリ菌に感染しているからといって、必ずしも症状が現れるわけではありません。ピロリ菌感染自体には自覚症状がない方がほとんどです。しかし、ピロリ菌によって胃の病気が進行すると、胃もたれ、胸やけ、吐き気、空腹時の胃痛、食後の腹痛、食欲不振などの不快な症状が現れるようになります。
ピロリ菌の検査方法
ピロリ菌の検査方法は胃カメラによる検査と、それ以外の検査に分けられます。
胃カメラ検査
●迅速ウレアーゼ試験
胃の組織を採取し、ピロリ菌が生成するアンモニアの反応を試薬を用いて検査します。
●鏡検法
採取した組織に染色し、顕微鏡を使用してピロリ菌の存在を確認します。
●培養法
採取した組織を培養し、ピロリ菌の増加するかを見ます。
それ以外の検査
●尿素呼気試験
検査用の薬を服用した後、一定時間が経過した呼気にピロリ菌の反応が出るか調べます。
●血液検査、尿検査
血液や尿にピロリ菌の抗体がないか調べます。
●便中抗原検査
便中にピロリ菌がいないか調べます。
ピロリ菌感染に関するよくある質問
ピロリ菌は遺伝しますか?
ピロリ菌は感染症であり、遺伝疾患ではありません。
ただし、親から子への家庭内感染が疑われているため、親がピロリ菌に感染していれば子も感染している可能性はあります。
夫婦間でピロリ菌が感染することはありますか?
ピロリ菌は大人から大人へうつることはないため、夫婦間での感染はありません。
ピロリ菌に感染するのは幼児期といわれています。
兄弟姉妹がピロリ菌に感染していたら検査したほうがいいですか?
兄弟姉妹の中でピロリ菌に感染している人がいる場合、幼少期の環境が同じのため感染している可能性が高いとされます。一度検査をおすすめします。
普段から水道水を飲んでいますが大丈夫ですか?
衛生状態が不十分な途上国や、戦中・戦後の日本では川の水や井戸水を介してピロリ菌に感染する可能性があったとされています。しかし、現代の水道水はそのようなリスクがなく、水道水からピロリ菌に感染することはありません。
まとめ
現在、井戸水の使用など不衛生な環境は減少していますが、乳幼児期にピロリ菌に感染した大人が子どもや孫に菌を移すケースが一般的です。例えば、硬い食べ物を親が口で噛んで柔らかくしたり、分けて与えたりする行為が、無意識のうちにピロリ菌を伝える原因となっています。
特に、お年寄りのピロリ菌感染率は高いため、60歳以上の方が子どもや孫に食べ物を口移しで与えると、その半数がピロリ菌を伝えている可能性があるとされています。
もし親や祖父母が過去にピロリ菌の除菌治療を受けたことがある場合は、自身のピロリ菌の検査も検討することをおすすめします。