胃カメラ検査は口から内視鏡を挿入するため、嘔吐反射や不快感が起こりやすい検査です。そのため、患者さんの負担を軽減するために「鎮静剤」が使われます。しかし、鎮静剤の効き方には個人差があり、一部の患者さんでは十分な効果が得られない場合があります。鎮静剤が効かない理由や、逆に強すぎる場合の注意点などについて解説します。
鎮静剤とは
鎮静剤は、患者さんの負担を軽減するための「眠り薬」のようなものです。胃カメラ検査は口からカメラを入れるため、「オエッ」とする嘔吐反射が起こりやすく、不快感や恐怖心がある方は少なくありません。鎮静剤を使うと検査中はほぼ眠った状態となり、痛みや不快感を最小限に抑えることができます。「気づいたら検査が終わっていた」と感じる方も多いです。
胃カメラで鎮静剤が効かない理由
しかし、鎮静剤の効き方には個人差があります。人によっては鎮静剤を使ったのにあまり効かず、辛い思いをされたという方もいるでしょう。なぜ、鎮静剤が効かないのでしょうか。それには以下のような理由が考えられます。
鎮静剤の量が少ない
鎮静剤は種類ごとに目安量があり、患者さんの年齢や性別、体重を考慮して適切な量が投与されます。鎮静剤の効きが悪い場合、鎮静剤が適正量よりも少なかった可能性があります。ただし、量を増やすと副作用が出てしまうリスクが高まるため、むやみに増やせばいいというものではありません。患者さんの状態をリアルタイムでチェックしながら、調整されます。
お酒に強い
鎮静剤には様々な種類があり、個人の体質によっては効きづらい場合があります。その一つとして挙げられる特徴が「お酒の強さ」です。普段からお酒をよく飲んでいてアルコールに耐性がある方は、鎮静剤が効きづらい傾向があります。このような場合、複数の鎮静剤を組み合わせて使用したり、量を調整するなどの対策が取られます。
なお、お酒に強いと必ずしも効きづらいというわけではありません。お酒に強くても、すぐに鎮静剤の効果がでる方もいらっしゃいます。
日頃から抗不安剤などの薬を飲んでいる
心療内科や精神科に通院し、日常的に睡眠薬や抗不安剤などを内服している患者さんの中には、鎮静剤に対する耐性ができており、鎮静効果が得られにくい場合があります。この場合も、投与量や種類の調整で適切な効果を発揮できることがほとんどです。
鎮静剤が効きすぎるとどうなる?
一方で、お酒に弱い方や身体機能が低下している方は、鎮静剤の効果が強すぎる可能性があります。特に高齢の患者さんや、肺、肝臓などの内臓機能が低下している方では、鎮静剤の過剰な作用により、酸素濃度や血圧が低下してしまうことがあります。このような場合は、慎重な投与量の管理と、呼吸・循環状態の綿密なモニタリングが必要となります。
鎮静剤の副作用
鎮静剤には胃カメラの痛みや不快感を軽減できるメリットがありますが、副作用がないか気になると思います。
鎮静剤を使用すると、眠気や吐き気、頭痛などの副作用が出る可能性がありますが、当日中に治ることがほとんどです。どんな薬にも副作用はあります。不安な方は事前に医師に相談し、副作用が出ないように量を調整してもらいましょう。
鎮静剤の副作用については以下の記事でも紹介しています。あわせてご覧ください。
鎮静剤が使えない人
鎮静剤を使って胃カメラ検査を受けたいと思っても、全員が鎮静剤を利用できるわけではありません。以下に当てはまる人は、種類によって鎮静剤を使えない場合があります。
- ・重症筋無力症の方
・急性閉塞隅角緑内障の方
・HIVプロテアーゼ阻害剤を使っている方
鎮静剤が使えない場合、鼻からの胃カメラ(経鼻内視鏡検査)で検査を行います。
まとめ
胃カメラ検査を受けるにあたって、鎮静剤についての不安がある方は、事前に医師に相談して適切な対策を立てましょう。検査時の苦痛を和らげ、快適に検査を受けられるよう、医師と相談しながら最適な処置を受けることが大切です。