胃カメラ検査は、胃や十二指腸の健康状態を確認する重要な手段ですが、すべての人に適しているわけではありません。特定の健康状態や状況にある人々は、この検査を受ける際に特別な注意が必要です。
この記事では、胃カメラ検査ができない人や注意が必要な人について、その理由と対処法について解説します。
胃カメラ検査ができない人・注意が必要な人
以下のような方は、胃カメラ検査ができない、または受ける場合は医師と相談が必要です。
ご高齢の方
胃カメラに年齢制限はありませんが、高齢者の場合、身体の機能低下や基礎疾患の存在が胃カメラ検査のリスクを高めることがあります。呼吸や心臓疾患がある高齢者は、検査中の合併症が発生しやすいため、医師と十分な相談が必要です。
パニック障害・嘔吐恐怖症の方
パニック障害や嘔吐恐怖症を持つ人々にとって、胃カメラ検査は極度のストレスとなり得ます。これらの状態では、検査がトラウマを引き起こす可能性があるため、代替の診断方法を探ることが推奨されます。ただし、胃カメラが絶対にできないわけではありません。適切に鎮静剤を使用すれば、ほぼ眠っている状態で検査を受けることができます。もし鎮静剤の使用が困難な場合は、医師との相談を通じて、胃部X線検査や超音波検査などの代替方法を検討しましょう。
妊娠中・授乳中の方
妊娠中や授乳中の女性は、使用する薬剤や検査自体が胎児や乳児に影響を及ぼす恐れがあるため、胃カメラはなるべく避けるべきとされています。しかし、妊娠の経過が良好であれば受けることもできます。ただし、胎児への影響があるため鎮静剤は使えません。さらに、検査目的によっては産後の検査をすすめられる場合があります。
授乳中の場合は、鎮静剤を使用した際、母乳へ移行するため一定時間授乳できません。鎮静剤を使用しない経鼻内視鏡であれば問題なく受けられます。
局所麻酔でアレルギー反応が出たことがある方
局所麻酔薬に対して過去にアレルギー反応を示した人は、胃カメラ検査時に同様の麻酔を使用することが問題となる場合があります。アレルギー反応を避けるため、事前に他の麻酔方法について医師と相談することが重要です。
抗血栓薬を服用している方
抗血栓薬は血液をサラサラにする薬で、心筋梗塞や脳梗塞など、心臓や脳の血管が血栓によって詰まる事態の予防や治療に用いられます。これらの薬には、出血しやすくなるという副作用が伴います。抗血栓薬を服用中の人は、検査によって出血リスクが高まる可能性があるため、注意が必要です。検査前には必ず医師に相談し、薬の調整が必要かどうかを確認してください。
疾患がある方
心疾患や呼吸器疾患などの重篤な疾患を持つ人は、検査中の合併症リスクが高まる可能性があります。これらの条件は、検査の安全性を左右するため、事前の詳細な評価が必要です。胃カメラが難しい場合は、代わりに胃部X線検査や超音波検査の実施が検討されます。
高血圧の方
高血圧患者は、検査中に血圧が上昇するリスクがあります。適切な血圧管理と医師の監督のもとで検査を行うことが重要です。
鼻からの胃カメラ検査(経鼻内視鏡検査)ができない人
通常の口から胃カメラを挿入する方法の他に、鼻からの胃カメラ(経鼻内視鏡検査)という選択肢もあります。以下の特徴に当てはまる人は、経鼻内視鏡検査ができない場合があります。
重度の花粉症やアレルギー性鼻炎の方
重度の花粉症やアレルギー性鼻炎を持つ人は、鼻腔が腫れているため経鼻内視鏡が困難になることがあります。これらの状態では、通常の口からの検査方法を選択することが望ましいでしょう。
鼻がつまっている方
鼻が常につまっている人は、経鼻内視鏡が適切に挿入できない可能性があります。また、もし鼻の粘膜に炎症がある場合、内視鏡を挿入する際に痛みが増すことがあります。このような状況であれば、鼻腔を広げるための鼻腔拡張剤を使用したり、炎症や鼻詰まりを治療するための措置を施した後に検査を行うことができます。
鼻腔が狭い方
鼻腔が狭い人は、経鼻内視鏡が挿入困難または不可能になる場合があります。例として、鼻中隔彎曲症や慢性鼻炎が鼻腔を狭める主な原因です。鼻腔が狭くなると、内視鏡が鼻の壁に接触しやすくなり、摩擦や圧力が増えるため、挿入時に痛みや不快感が強まる可能性があります。
このような場合は、口からの検査が適切な選択となります。
ストーマ(人工肛門)がある方
ストーマは、大腸がんや炎症性腸疾患の手術後、または先天的な理由で腸の機能が損なわれた場合に人工的に作られた排泄のための出口のことです。
ストーマがある場合、人工肛門の位置が内視鏡の通常の進行経路と異なるため、内視鏡が通過しにくくなります。また、経鼻内視鏡検査に伴う鼻腔や咽頭への刺激、圧迫、振動や移動は人工肛門に負担をかけることが考えられます。
人工肛門の周囲が敏感である場合や装具の安定性が懸念される場合、内視鏡検査の回避が推奨されることもあります。
まとめ
胃カメラ検査は有効な診断ツールですが、特定の健康状態や個人的な状況によっては実施が適切ではない場合があります。検査を受ける前には、これらの潜在的なリスクを医師と十分に検討し、必要に応じて他の診断方法を探るべきです。