胃の検査を受ける際、バリウム検査と胃カメラ検査どちらで受けるべきか迷いますよね。
この記事では、胃の検査で広く行われているバリウム検査と胃カメラ検査について、それぞれの特徴やメリット・デメリットを比較し、どちらの検査がおすすめなのかを解説します。胃の検査を控えている方や、どちらの検査を選べばいいか迷っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
バリウム検査とは
バリウム検査は、バリウムという白い造影剤を飲み、レントゲン撮影で胃の様子を観察する検査です。「胃透視検査」とも呼ばれ、バリウムが胃の内壁に付着することで、レントゲン写真で胃の形や異常な陰影を確認できるようになります。検査時間は約10分程度で、比較的短時間で終了します。
胃カメラとは
胃カメラ検査は、細い内視鏡を口から挿入し、直接胃の内部を観察する検査です。「胃内視鏡検査」とも呼ばれ、内視鏡の先端についているカメラで胃の粘膜や潰瘍、ポリープなどの異常を詳しく観察することができます。また、必要に応じて、その場で組織を採取する生検も可能です。
バリウム検査のメリット
バリウム検査には以下のようなメリットがあります。
検査費用が比較的安価
バリウム検査は、胃カメラ検査と比べて費用が安く済むという利点があります。健康保険が適用されるため、自己負担額は数千円程度で受けられることが多いでしょう。ただし、保険が適用されるのは何かしら症状があり病気の可能性がある場合で、何も症状がない方は自費診療となります。
胃全体を一度に観察できる
バリウム検査は、飲み込んだバリウムが胃の内壁全体を覆うことで、胃の全容を把握し、さらに胃の蠕動運動を観察することができます。このような特性から、バリウム検査は胃の運動機能や全体的な形態を評価するのに適しており、手術前の検査としても用いられることがあります。バリウム検査で得られる情報は、胃の状態を総合的に判断する上で非常に有用なのです。
スキルス性胃がんが発見しやすい
スキルス性胃がんは、胃壁が硬く肥厚するタイプの胃がんで、早期発見が難しい病気です。バリウム検査では、胃壁の硬さや伸展性の低下を捉えやすいため、スキルス性胃がんの発見に適しています。胃カメラ検査では見つけにくいこのタイプの胃がんも、バリウム検査なら見つかる可能性が高くなります。
バリウム検査のデメリット
一方、バリウム検査にはデメリットも存在します。
少量の放射線被ばくがある
バリウム検査ではレントゲン撮影を行うため、少量の放射線被ばくがあります。とはいえ、その量は非常に少なく、健康への影響はほとんどないと考えられています。しかし、「被ばく」はマイナスイメージがあるため不安に思う方が多いのも事実です。妊娠中の方や、放射線被ばくに不安を感じる方は、医師に相談して検査方法を選択することが大切です。
腸閉塞のリスクがある
バリウムが腸内に残ることで、まれに腸閉塞を引き起こすリスクがあります。特に、高齢者や便秘がちな人、腸の狭窄がある人などは注意が必要です。検査後は水分を十分に摂取し、排便を促すことが大切だと言えます。
詳細な診断ができない
バリウム検査では、胃の粘膜の色の変化を観察することができません。発赤やただれなどの炎症所見や、悪性腫瘍の色調の変化は判断できないのです。また、小さなポリープや平坦な病変の発見も難しいため、詳細な診断が必要な場合は胃カメラ検査が推奨されます。
検査後に下剤を飲む必要がある
バリウム検査後は、腸内に残ったバリウムを排出するために下剤を飲む必要があります。下剤の効果で、しばらくの間は下痢状態が続くことがあり、社会生活に支障をきたす可能性もあります。事前に検査の流れを確認し、スケジュール調整をしておくことが賢明です。
げっぷをすると再度発泡剤を飲まなければならない
バリウム検査では、胃を膨らませるために発泡剤を飲みます。検査中にげっぷをしてしまうと、胃が収縮して観察しづらくなるため、再度発泡剤を飲まなければなりません。げっぷを我慢するのは難しいものですが、検査をスムーズに進めるためには必要なことです。
胃カメラ検査のメリット
これまで、先にバリウム検査を行い、異常があったら胃カメラを行う流れが主流でした。現在では胃カメラだけの検査も増えています。胃カメラはどのようなメリットがあるのでしょうか。
小さな病変も発見できる
胃カメラ検査では、高解像度のカメラを用いて胃内部を直接観察するため、バリウム検査では見落とされがちな小さな病変も発見することができます。早期の胃がんやポリープ、潰瘍などは、サイズが小さいうちに見つけることが重要です。胃カメラ検査なら、わずか数ミリ程度の病変も見逃すことなく、的確に診断できるでしょう。
胃粘膜の色まで観察できる
胃カメラ検査では、胃粘膜の色調の変化も詳細に観察できます。発赤やただれ、出血などの炎症所見は、胃カメラ検査で明確に捉えることが可能です。また、悪性腫瘍に特徴的な色調の変化も見抜くことができるため、がんの早期発見にも役立ちます。バリウム検査では判断が難しい粘膜の状態も、胃カメラなら的確に評価できるのです。
生検も可能
胃カメラ検査では、必要に応じてその場で組織を採取する生検(病理検査)を行うことができます。検査中気になる箇所が見つかった場合、組織の一部を採取し、顕微鏡で詳しく調べます。これにより、がんの確定診断や炎症の程度の評価が可能となります。
食道がんの発見率が高い
胃カメラ検査では、食道の状態も詳しく観察できます。食道がんは早期発見が難しいことで知られていますが、胃カメラ検査なら食道の粘膜の変化を捉えやすいため、食道がんの発見率が高くなります。バリウム検査では食道の異常を見つけづらいことがありますが、胃カメラ検査であれば、食道がんの早期発見・早期治療に役立てることができるでしょう。
胃カメラ検査のデメリット
一方、胃カメラにもデメリットはあります。
鎮静剤を使わないと辛い場合がある
胃カメラ検査では、内視鏡を口から挿入するため、強い不快感や嘔吐反射を伴うことがあります。特に、鎮静剤を使用しない場合は、検査中の苦痛が強くなる可能性があります。事前に医師と相談し、鎮静剤の使用を検討することが大切です。ただし、鎮静剤を使った場合は、検査後しばらくの間、安静にする必要があります。
なお、嘔吐反射が強く胃カメラ検査が辛いという方には、鎮静剤を使う以外に、鼻からカメラを挿入する経鼻内視鏡検査という方法もあります。
麻酔薬によるショックのリスクがある
胃カメラ検査で使用する鎮静剤や麻酔薬には、ごくまれにアレルギーショックを引き起こすリスクがあります。特に、アレルギー体質の人や心疾患のある人は注意が必要です。検査前に医師に自分の健康状態を伝え、リスクを十分に理解した上で検査を受けることが重要となります。万が一の場合に備え、検査中はバイタルサインのモニタリングが行われます。
胃カメラ検査とバリウム検査どっちがいい?
結論、胃カメラ検査をおすすめします。なぜかというと、検査の精密さという点においてはやはり胃カメラが圧倒的に優れているからです。もちろん、バリウム検査にもメリットはあります。しかし、胃の形や凹凸のみで間接的に判断するバリウム検査と、細かい部分の色合いまで直接確認できる胃カメラ検査では、取れるデータ量が大きく違います。実際に、胃がんの発見率も胃カメラの方が高いことがわかっています。
また、バリウム検査を受けて異常が見つかった場合、追加で胃カメラによる生検が必要です。結果として2回検査が必要になるのであれば、最初から胃カメラで生検までできたほうが効率的ともいえます。
ただし、バリウム検査を受けた人の死亡率が、受けなかった人と比較して40〜50%も低いというデータがあることから、この検査には一定の意義があると言えます。胃がんは以前、男女ともにがんによる死亡原因の第1位でしたが、現在では男性で3位、女性で4位にまで順位を下げました。この背景に、長年にわたって胃がん検診に用いられてきたバリウム検査の貢献があることは間違いないでしょう。
バリウム検査がおすすめな人
以下に当てはまる方には、バリウム検査がおすすめです。
- ・なるべく費用を抑えたい
- ・今まで胃の病気をしたことがなく、症状もない
- ・40歳未満である
胃カメラ検査がおすすめな人
以下に当てはまる方には、胃カメラ検査をおすすめします。
- ・精密な検査をしたい
- ・家系に胃がんの人がいる
- ・胃の調子が悪い
- ・ピロリ菌感染歴がある
まとめ
胃の検査では、精度、詳細な観察、生検の可能性、検査範囲の広さなどから、胃カメラ検査がおすすめです。特に、胃がんの早期発見や詳細な診断を目的とする場合は、胃カメラ検査が第一選択となります。
ただし、個人の健康状態や経済的な事情、検査に対する抵抗感なども考慮する必要があります。医師と十分に相談し、自分に合った検査を選択しましょう。