胃カメラ検査で「異常なし」と診断されたのに、胃痛や胃もたれが続く、、といったことはありませんか?それは、もしかすると機能性ディスペプシアかもしれません。
この記事では機能性ディスペプシアについて解説します。
胃カメラで異常なしなのに胃が痛い!機能性ディスペプシアとは
胃痛や胃もたれがあるのに、胃カメラでは異常なし。この場合、機能性ディスペプシアの可能性があります。
「機能性ディスペプシア(FD; functional dyspepsia)」とは、診断検査で具体的な異常が見つからないにもかかわらず、胃やみぞおちの痛み、消化不良、早期満腹感など、腹部に慢性的な不快感を引き起こす状態を指します。
2013年に正式に認められたため聞き馴染みがない病気かもしれませんが、珍しくはありません。日本では、6人から10人に1人が機能性ディスペプシアであると報告されています。
機能性ディスペプシアの原因
機能性ディスペプシアは、複数の因子が互いに影響し合いながら症状を引き起こしていると考えられています。具体的には、ピロリ菌の感染、胃・十二指腸の知覚過敏、胃の運動機能障害、胃の携帯異常、遺伝的要因などがあります。
また、飲酒、喫煙、睡眠不足、ストレスなどの生活習慣も考えられる原因の一つです。特にストレスが影響を与えるとされていますが、ストレスは個々人によって反応が大きく異なり、科学的な検証が困難なため、具体的なことはまだ解明されていません。
機能性ディスペプシアの症状
機能性ディスペプシアの症状は主に以下です。
・みぞおちの痛み
・食後の胃もたれ
・早期膨満感(少量の食事で異常に早く満腹感を感じること)
・食後に長時間満腹感が続く
・酸っぱいものが上がってくる
・吐き気や嘔吐
・げっぷ
・食欲不振
・胸やけ
機能性ディスペプシアの検査・診断
機能性ディスペプシアを診断する際には、胃や十二指腸の状態を詳しく調べるために胃カメラやバリウム検査を実施し、「胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がんといった器質的な病気が存在しないこと」を確かめることが必要です。
また、みぞおちの周辺の症状は胆石や膵臓がんといった胃の周囲の内臓疾患の兆候である可能性もあり、超音波検査などが行われることもあります。これらの検査を通じて他の疾患が原因でないことが明らかになった場合にのみ、機能性ディスペプシアとの診断が下されます。
機能性ディスペプシアの治療
機能性ディスペプシアの治療には、健康的な生活習慣と食事の改善、そして薬物療法があります。
生活習慣の改善では、定期的な生活リズムを保ち、ストレスを最小限に抑えることで自律神経のバランスを整えることが大切です。過度の飲酒や過食、速食は控え、脂っこい食品や糖分の高い食品の摂取を制限します。
薬物療法に関しては、症状に個人差がありますので、患者さんごとに合わせて薬を処方します。
機能性ディスペプシアで処方される主な薬は以下です。
・消化管の動きを改善する薬(例:アコチアミド、モサプリド)
・胃酸の分泌を抑える薬(例:ファモチジン、ボノプラザン)
・漢方薬(例:六君子湯、半夏瀉心湯、半夏厚朴湯)
・抗うつ薬や抗不安薬など
機能性ディスペプシア以外の病気の可能性について
胃カメラで異常なしの場合、胃の周りの臓器の病気の可能性も考えられます。ここでは2つの病気について触れておきます。
胆石症
この状態は、胆嚢やその接続管に結石が形成される病気です。結石が胆嚢内を動き回っている間は通常痛みを感じませんが、結石が出口の狭い部分や接続管に詰まり、炎症を引き起こすと痛みが現れます。食事の後に痛みが生じることもこの病気の特徴の一つです。治療を受けずに放置すると、敗血症という重大な病気に進行するリスクがあります。胆嚢は十二指腸の近くに位置しているため、十二指腸潰瘍と誤診されることがしばしばあります。
膵炎・膵臓がん
膵臓(すいぞう)で炎症が発生したり、腫瘍が形成された場合、症状が進むと痛みを伴います。この痛みは、膵臓が胃の裏側に位置しているため、背中にも感じられることがあります。膵臓は肝臓と同じく「沈黙の臓器」と呼ばれており、痛みを感じにくい特性があるため、病気が進行していることに気づかない場合もあるので注意が必要です。
まとめ
健康診断や定期検診で異常がなかったのに、腹部に不快感が続く場合は機能性ディスペプシアの可能性があります。症状が当てはまったら、まずは胃カメラを受けて他の病気の可能性を除外することが重要です。必要に応じて、超音波検査も受けましょう。