胃粘膜下腫瘍とは?

通常、胃ポリープや胃の多くは胃の内側を覆う粘膜から発生します。胃粘膜下腫瘍は、粘膜よりも深い層(粘膜下層や筋層など)から発生する腫瘍の総称です。表面が正常な粘膜で覆われているため、胃カメラ検査では丸く盛り上がったコブのように見え、表面からは腫瘍の種類を判断しにくいという特徴があります。
「胃カメラで粘膜下腫瘍が見つかった」「胃にコブがあると言われた」など、検査結果についてご不安をお持ちの方は、お気軽に箕面市・箕面萱野駅のながい内科循環器内科クリニックへご相談ください。
胃粘膜下腫瘍の種類と特徴
GIST(消化管間質腫瘍)
胃粘膜下腫瘍の中では特によく見られる悪性腫瘍です。増大傾向にある、あるいは大きさが2cm以上の胃粘膜下腫瘍の場合、GISTの可能性を考慮する必要があります。
平滑筋腫
胃の筋肉層から発生する腫瘍で、基本的には良性です。成長が遅く、多くの場合は経過観察のみで対応します。ただし、胃カメラのみではGISTとの鑑別が難しいので、さらなる精密検査(超音波内視鏡検査など)が必要になります。
神経内分泌腫瘍
神経内分泌細胞から発生する腫瘍で、悪性度によってカルチノイド(低悪性度)から神経内分泌がん(高悪性度)まで幅広い種類があります。悪性度に応じた治療が必要です。
脂肪腫
脂肪組織からなる柔らかい良性腫瘍です。超音波内視鏡では特徴的な像を示すため、比較的診断が容易です。
迷入膵
先天的に膵臓の組織の一部が胃壁内に取り込まれたもので、厳密には腫瘍ではありません。通常は無症状なので治療の必要はなく、経過観察となります。
胃粘膜下腫瘍の症状
腫瘍が小さな場合の症状
胃粘膜下腫瘍の多くは無症状であり、健康診断や人間ドック、あるいは他の症状で行った胃カメラ検査で偶然発見されることがほとんどです。
腫瘍が大きくなった場合の症状
腫瘍が大きくなると(一般的に3~5cm以上)、以下のような症状が現れることがあります。
- 胃もたれ
- 食後の膨満感
- 胃のつかえ感
- 食欲不振
- 腹痛(みぞおちの痛み) など
出血を伴う場合の症状
腫瘍の表面に潰瘍ができて出血すると、以下のような症状が現れることがあります。
- 黒色便(消化された血液が混じった真っ黒な便)
- 貧血症状(めまい、倦怠感、息切れなど) など
胃粘膜下腫瘍の検査と診断
胃内視鏡検査(胃カメラ検査)
口や鼻から内視鏡を挿入し、胃の内壁を直接観察します。腫瘍の大きさ、形状、表面の性状などを観察でき、必要に応じて組織採取(生検)を行えるため、胃の病気の確定診断に有効な検査です。
ただし、胃粘膜下腫瘍の場合は表面が正常粘膜で覆われているため、通常の生検では腫瘍組織を採取できないことが多く、種類の確定診断は困難です。
超音波内視鏡検査(EUS)
内視鏡の先端に超音波装置を取り付けた検査機器を使用し、胃壁の各層や腫瘍の内部構造を詳しく観察します。粘膜下腫瘍の発生層や内部エコー像から、腫瘍の種類をある程度推測できます。詳細な情報が得られるため、粘膜下腫瘍の診断には非常に重要な検査です。
超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)
超音波内視鏡を用いて腫瘍の位置を確認しながら、細い針を刺して組織を採取する検査法です。組織を直接採取できるため、胃粘膜下腫瘍の確定診断に有用です。
CT検査、MRI検査
腫瘍が大きい場合や悪性が疑われる場合には、CT検査やMRI検査を行い、腫瘍の広がりや他の臓器への転移の有無を調べます。
※当院で行っていない検査が必要な場合は、提携先医療機関と連携して実施します
胃粘膜下腫瘍の治療
胃粘膜下腫瘍の治療方針は、腫瘍の種類、大きさ、悪性の可能性などを考慮して決定されます。
経過観察
胃粘膜下腫瘍が小さく、上述の検査で悪性所見が見られない場合は、定期的な検査による経過観察が基本となります。経過観察の頻度は通常6か月~1年に1回程度ですが、腫瘍の特徴や増大傾向によって調整します。
手術
5cm以上の大きな腫瘍や、経過観察中に大きさや形に変化が見られる場合には、手術による切除を検討します。従来の開腹手術以外にも、腹腔鏡を使った治療や、内視鏡と外科処置を組み合わせた手術(LECS)などの様々な術式があります。
※提携先医療機関と連携して実施します
日常生活での注意点
経過観察中の日常生活に特別な制限はありませんが、症状に変化があった場合(腹痛が強くなる、食欲不振が続く、黒い便が出るなど)には早めに受診してください。
また、手術で腫瘍を摘出した後も定期的な検査が必要です。特にGISTでは5年以上経過してからの再発も報告されているため、長期的なフォローアップが重要となります。