直腸カルチノイド(直腸NET)とは?

直腸カルチノイドは、直腸の粘膜下層に発生する比較的まれな悪性腫瘍(がん)です。カルチノイドは「がんに類似するもの」を意味し、悪性度こそ低いものの、現在ではがんの一種として扱われます。カルチノイドの名前が誤解を招かないように近年では「神経内分泌腫瘍(NET)」と呼ばれるようになっています(※)。
多くの場合で自覚症状がなく、大腸カメラ検査で偶然発見されることが一般的です。箕面市・箕面萱野駅のながい内科循環器内科クリニックでは、専門医による大腸カメラ検査で直腸カルチノイドへの適切な対応を行います。お気軽にご相談ください。
(※)カルチノイドの名称も未だに使用されるため、本ページでは「直腸カルチノイド」としてご紹介しております
直腸カルチノイドの特徴とリスク
好発部位
直腸カルチノイドは、直腸の下部(肛門から5~10cm程度の部位)に多く発生します。この部位は大腸カメラ検査で比較的観察しやすい場所であるため、早期発見につながることが多いです。
見た目の特徴
内視鏡検査では、表面が平滑で黄色調の隆起として観察されます。大きさは数mm~1cm程度のものが多く、表面に凹みが見られることもあります。
悪性度によるグレード分類
G1(低悪性度)
転移のリスクは低いです。多くの直腸カルチノイドはこのG1に分類されます。
G2(中悪性度)
悪性度は低いですが、G1より転移リスクは相対的に高くなります。G1ほどではありませんが、直腸カルチノイドの中では比較的よく見られます。
NEC(高悪性度、神経内分泌がん)
急速に増殖するため、転移しやすい悪性度の高い腫瘍です。この段階では通常のがんと同様の治療アプローチ(放射線治療や抗がん剤治療など)が必要になります。
直腸カルチノイドの症状
無症状
直腸カルチノイドのほとんどは無症状で、健康診断や人間ドックなどの大腸カメラ検査で偶然発見されることがほとんどです。
腫瘍が大きくなった場合の症状
- 便秘・下痢
- 血便
- 腹痛
- 肛門部の不快感(特に下部直腸に発生した場合)
- 排便時の痛み、残便感 など
カルチノイド症候群
カルチノイドではセロトニンなどのホルモン分泌により、以下のような症状が現れることがあります(カルチノイド症候群)。ただし、直腸カルチノイドではほとんど見られません。
- 下痢
- 顔面の紅潮(顔が赤くなる、ほてる)
- 喘息症状(呼吸困難、喘鳴)
- 心臓弁膜症(動悸、息切れなど) など
直腸カルチノイドの検査と診断
大腸内視鏡検査(大腸カメラ検査)
肛門から内視鏡を挿入し、特徴的な黄色調の隆起を確認します。同時に生検(組織採取)を行うことで確定診断ができます。
超音波内視鏡(EUS)
通常の内視鏡に超音波装置を組み合わせた検査で、腫瘍の深達度(筋層への浸潤の有無)を評価します。粘膜下層にとどまっているか、筋層まで浸潤しているかを確認できるため、治療方針を決定するうえで重要な情報となります。
CT検査、MRI検査
リンパ節転移や遠隔転移(肝臓など)の有無を評価するために行います。特に1cm以上の腫瘍や、超音波内視鏡で筋層浸潤が疑われる場合には必須の検査です。
※当院で行っていない検査が必要な場合は、提携先医療機関と連携して実施します
直腸カルチノイドの治療
内視鏡治療
以下の条件を満たすものには、適応を慎重に判断したうえで内視鏡による切除を試みます。
- 大きさが1cm未満
- 悪性度がG1(低悪性度)
- 超音波内視鏡で筋層浸潤がない
- 画像検査でリンパ節転移や遠隔転移がない など
外科手術
以下のような場合には、内視鏡治療ではなく外科手術が必要となります。
- 腫瘍のサイズが1cmを超える
- 超音波内視鏡検査で筋層浸潤が疑われる
- リンパ節転移や遠隔転移が確認された
- 内視鏡切除後の病理検査で、切除断端陽性(腫瘍が完全に切除されていない)と判定された
- 悪性度がG2以上 など
放射線療法・化学療法
G1・G2の進行例や転移例、NEC(神経内分泌がん)、手術不能例の場合には、放射線療法や化学療法(抗がん剤治療)が必要になります。
※当院で行っていない治療は、提携先医療機関と連携して実施します
治療後の注意点
内視鏡治療後の注意点
出血のリスク
治療後約1週間は出血のリスクがあるため、以下の点に注意してください。
- 激しい運動や重い物の持ち上げを避ける
- 熱い湯船への入浴は控え、シャワーにする
- アルコールや刺激物の摂取を控える
- 抗血栓薬(アスピリンなど)の服用については医師の指示に従う など
腹痛や発熱
術後に強い腹痛や発熱がある場合は、穿孔などの合併症の可能性があるため、すぐに当院へご相談ください。
便の異常
便の色や性状に変化がないか観察し、血便が見られた場合は医師に相談してください。
定期的なフォローアップ
直腸カルチノイドは治療後も再発や転移のモニタリングが必要です。以下のような症状が現れた場合は、再発や転移、あるいは大腸がんなどの他の消化器疾患の可能性があるため、すぐに当院を受診してください。
- 新たな腹痛や便通異常
- 説明のつかない体重減少
- 肝機能検査値の上昇
- 全身倦怠感や食欲不振 など