血便とは?

血便とは、便に血液が混じる症状を指します。血液の混じり方や便の色によって、出血している部位や原因疾患を推測することができます。鮮やかな赤色の血便は主に大腸や肛門付近からの出血を、黒色便(タール便)は胃や十二指腸など上部消化管からの出血を示唆します。血便は様々な疾患のサインとなるため、症状が現れた場合は適切な診断と治療が重要です。
箕面市・箕面萱野駅のながい内科循環器内科クリニックでは、内視鏡専門医による胃カメラ検査や大腸カメラ検査を行い、血便の原因を正確に診断しています。症状の程度や特徴に応じた適切な検査と治療を提供していますので、血便でお悩みの方は、お早めに当院へご相談ください。
血便の原因
大腸・直腸の疾患
大腸ポリープ・大腸がん
大腸粘膜に生じる腫瘍性病変です。ポリープの多くは良性ですが、一部は時間の経過とともに大腸がんへ進行することがあります。初期は無症状のことが多いですが、進行すると血便や便通異常(下痢や便秘)、腹痛などが現れます。特に40歳以上で血便がある場合は、大腸がんの可能性を考慮して検査が必要です。
炎症性腸疾患
潰瘍性大腸炎やクローン病などの慢性炎症性疾患です。粘液を伴う血便(粘血便)や下痢、腹痛、体重減少などの症状が特徴です。ストレスや食事、遺伝的要因などが関与していると考えられています。
感染性腸炎
細菌(サルモネラ菌、カンピロバクターなど)やウイルス、寄生虫による腸の感染症です。激しい下痢や腹痛、発熱とともに血便が見られることがあります。食中毒としても知られています。
虚血性大腸炎
大腸への血流が一時的に減少または途絶することで起こる疾患です。主に高齢者に多く、突然の腹痛と血便が特徴です。便秘や下痢、腹部膨満感などを伴うこともあります。
上部消化管疾患
胃・十二指腸潰瘍
胃や十二指腸の粘膜に潰瘍ができる疾患です。上部消化管からの出血は胃酸などの消化液によって黒色に変化するため、黒色便(タール便)として排泄されます。みぞおちの痛みや胸焼けなどを伴うことがあります。
食道静脈瘤
肝硬変などによって門脈圧が上昇し、食道の静脈が瘤状に拡張した状態です。破裂すると大量の出血を起こし、吐血や黒色便として現れます。緊急処置が必要な命に関わる状態です。
肛門部の疾患
痔核(いぼ痔)
肛門部の静脈が拡張・うっ血して痔核を形成する疾患です。排便時に鮮やかな赤い血が付着することが特徴で、便の表面に血液が付着したり、トイレットペーパーに血がつくことが多いです。痛みを伴わないことが多いですが、炎症を起こすと痛みを伴うこともあります。
裂肛(切れ痔)
肛門の粘膜が切れる疾患です。硬い便の排泄時や便秘が原因で起こることが多く、排便時に鋭い痛みと出血を伴います。血液は鮮やかな赤色で、少量のことが多いです。
血便の症状
典型的な症状
- 便に赤色の血液が混じる(赤色血便)
- 黒色のタール状の便(黒色便)
- 便の表面やトイレットペーパーに血液が付着
- 粘液と血液が混じった便(粘血便) など
血便の性状は出血部位や量、消化管内での滞留時間などによって異なります。
随伴症状
血便に伴って現れる症状には以下のようなものがあります。
- 腹痛や腹部不快感
- 排便時の痛み
- 下痢や便秘
- 吐き気、嘔吐
- 発熱
- 倦怠感、めまい(貧血を伴う場合)
- 体重減少 など
重大な病気の可能性がある症状
以下の症状が血便とともに現れる場合は、重篤な疾患の可能性があるため、速やかに医療機関を受診してください。
- 大量の出血
- 持続的な黒色便
- 高熱を伴う血便
- 急激な体重減少
- 強い腹痛
- 顔面蒼白、冷や汗、めまい(ショック症状)
- 呼吸困難や動悸(貧血症状) など
血便の検査
大腸内視鏡検査(大腸カメラ検査)
大腸内視鏡検査は、肛門から内視鏡を挿入し、大腸全体を直接観察する検査です。大腸ポリープ、大腸がん、炎症性腸疾患など、血便の原因となる様々な疾患を発見することができます。
胃内視鏡検査(胃カメラ検査)
黒色便など上部消化管からの出血が疑われる場合には、胃カメラ検査が重要です。口や鼻から内視鏡を挿入し、食道、胃、十二指腸の粘膜を直接観察することで、潰瘍や腫瘍、静脈瘤などの出血源を特定できます。
便検査
便潜血検査や便培養検査を行い、肉眼では見えない微量の血液や、感染性の病原体の有無を調べます。大腸がん検診でも用いられる検査です。
血液検査
貧血の有無、炎症反応、肝機能、腎機能など全身状態を評価し、出血の程度や原因疾患の手がかりを得ます。
腹部超音波検査(エコー)
腹部の臓器(肝臓、胆嚢、膵臓、腎臓など)の状態を観察し、炎症や腫瘍などの異常がないかを調べます。無痛で体への負担が少ない検査です。
血便の治療
薬物療法
症状や原因に応じて、以下のような薬剤を使用します。
潰瘍治療薬
胃・十二指腸潰瘍からの出血には、プロトンポンプ阻害薬(PPI)やH2受容体拮抗薬などの胃酸分泌抑制薬を使用します。これにより粘膜の修復を促進し、再出血を防ぎます。
炎症性腸疾患の治療薬
潰瘍性大腸炎やクローン病には、5-ASA製剤、ステロイド、免疫調節薬、生物学的製剤などを使用し、腸管の炎症を抑えます。
痔に対する治療
痔による出血に対しては、軟膏や坐薬を使用します。これらの薬剤には、局所の炎症を抑える抗炎症成分や、痛みを和らげる成分、粘膜の修復を助ける成分などが含まれています。
※必要に応じて肛門科クリニックなどをご紹介します
生活習慣の改善
血便の原因によっては、生活習慣の改善が重要な治療の一部となります。痔による出血の場合は、十分な水分摂取と食物繊維の多い食事で便通を整え、長時間のトイレ滞在を避けることが大切です。また、アルコールやカフェイン、刺激物の過剰摂取を控え、適度な運動を取り入れることで腸の健康を維持することができます。ストレス管理も重要で、リラクゼーション法を取り入れることで腸管の過敏反応を抑える効果も期待できます。
受診のタイミング
早期受診を推奨
- 初めて血便を認めた場合
- 痔と思われる出血が2週間以上続く
- 便潜血検査で陽性と言われた
- 40歳以上で血便がある(大腸がんのリスクが高まる年齢)
- 原因不明の黒色便がある など
速やかな受診が必要
- 大量の出血がある
- 黒色便と顔面蒼白、冷や汗などのショック症状がある
- 高熱を伴う血便
- 強い腹痛を伴う血便
- めまいや立ちくらみ、動悸などの貧血症状がある
- 吐血と血便が同時に起こる など