胃潰瘍とは?

胃潰瘍は、胃の内側を覆う粘膜がただれて深い傷ができている状態です。通常、胃は強い酸性の消化液を分泌していますが、胃の内壁は粘液によって保護されています。しかし、何らかの理由でこの防御因子と胃酸の攻撃因子のバランスが崩れることで潰瘍が形成されます。
症状が軽いうちの早期治療が大切です。「みぞおちの痛みが続く」「食後に胃が痛む」「胸焼けがひどい」などの胃の不調でお悩みの方は、箕面市・箕面萱野駅のながい内科循環器内科クリニックへご相談ください。
胃潰瘍の症状
上腹部痛(みぞおちの痛み)
みぞおち(上腹部中央)や左脇腹あたりの痛みは、胃潰瘍では特によく見られます。痛みの性質は、鈍い痛み、焼けるような痛み、重苦しい感じなど様々ですが、以下のような特徴があります。
- 食後30分~2時間程度で痛みが出ることが多い
- 空腹時に痛みが和らぐことがある(十二指腸潰瘍とは逆の傾向)
- 痛みが背中に放散することもある など
消化器症状
- 胸焼け(胸の焼けるような感じ)
- 呑酸(酸っぱい液体がのどまで上がってくる感覚)
- 吐き気、嘔吐
- 食欲不振
- 胃もたれ感
- 腹部膨満感
- 口臭 など
出血に関連する症状
潰瘍が深くなり血管を傷つけると、以下のような症状が現れることがあります。
- 吐血
- 黒色便(消化された血液が混じった真っ黒な便)
- 貧血(めまい、倦怠感、息切れなど) など
重症例での症状
非常に進行した場合や大量出血、穿孔(胃の壁に穴があく)などの合併症を起こした場合には、以下のような重篤な症状が現れることがあります。
- 激しい腹痛
- 腹膜炎の症状(腹部全体の痛み、発熱、冷や汗など)
- ショック症状(大量出血時) など
胃潰瘍の原因
ピロリ菌感染
現在、胃潰瘍の原因として非常に重要視されているのがピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)の感染です。胃の粘膜に感染したピロリ菌は、毒素や炎症性物質を放って胃粘膜の炎症を引き起こします(慢性胃炎)。胃炎が続くと胃の防御機能が弱まり、胃酸や消化酵素による粘膜へのダメージが増大して潰瘍を引き起こします。日本人の胃潰瘍患者の多くはピロリ菌に感染していると言われています。
特定の薬剤の副作用
痛み止めや解熱剤として使われる薬剤の一部には、胃の粘膜を保護するプロスタグランジンという物質の生成を抑制してしまうものがあります。これによって潰瘍形成のリスクが高まるので、特に長期間使用する場合や高齢者では注意が必要です。
また、喘息や関節リウマチなどの治療に使われるステロイド薬も、長期間使用すると胃潰瘍のリスクを高めます。
ストレス、生活習慣
精神的・肉体的なストレス、不規則な食生活、睡眠不足、喫煙、過度のアルコール摂取も胃潰瘍の危険因子です。特に強いストレスは胃酸の分泌を増加させ、胃の血流を悪化させることで粘膜のバリア機能を低下させます。
胃潰瘍の検査と診断
胃内視鏡検査(胃カメラ検査)
口または鼻から細い内視鏡を挿入し、胃の内部を直接観察します。潰瘍の有無、大きさ、深さ、場所などを詳細に確認できます。
ピロリ菌検査
胃潰瘍の主な原因であるピロリ菌の感染を調べる検査です。内視鏡検査時の組織検査で調べることもできますが、尿素呼気試験、血液検査、尿検査、便検査などでも調べることもあります。
組織検査(生検)
内視鏡検査時に組織を採取(生検)して、悪性所見(胃がん)がないかどうかを調べます。
血液検査
採血を行い、貧血や炎症反応の有無を調べます。また、肝機能・腎機能を調べることで、薬剤の安全性を確かめる目的もあります。
胃潰瘍の治療
薬物療法
患者様の体質や症状に応じた内服薬を使い、症状を緩和させます。以下のような薬剤から最適なものを選択・併用します。
- プロトンポンプ阻害薬(PPI)、H2受容体拮抗薬(H2ブロッカー):胃酸の分泌を抑制する薬
- 制酸剤:胃酸を中和する薬
- 粘膜保護剤:胃や十二指腸の粘膜を保護し、修復を促進する薬 など
ピロリ菌の除菌治療
ピロリ菌が陽性の場合は、胃潰瘍の治療と同時に除菌治療も行います。除菌に成功すれば、胃潰瘍の再発予防にもつながります。
生活習慣の改善
胃潰瘍の症状悪化の原因となる生活習慣を改めます。
- 規則正しい食事と十分な休養
- 禁煙と節酒
- ストレス管理
- 刺激物(辛い食品、酸っぱい食品、カフェインなど)の過剰摂取を避ける
- 胃に負担のかかる薬の使用を見直す(医師に相談の上) など
重症例への対応
内視鏡的止血術
出血がある場合は内視鏡を用いて止血します。クリップで血管を挟んだり、止血剤を散布したりする方法があります。
外科手術
内視鏡的に止血できない大量出血がある場合は、穿孔が確認される場合は手術が必要になることもあります。
合併症と治療後の注意点
胃潰瘍は適切な治療を受けても再発することがあります。再発を防ぐためには以下の点に注意しましょう。
使用薬剤の見直し
薬剤が原因の胃潰瘍の場合は、可能であれば使用を中止するか、胃粘膜保護薬を併用する形で対応します。
生活習慣の改善
禁煙、節酒、規則正しい食生活、ストレス管理などが再発予防に役立ちます。
定期検査
ピロリ菌への感染歴自体が胃がんのリスク要因となりますので、治療後も定期的な胃カメラ検査が重要です。