胃悪性リンパ腫

胃悪性リンパ腫

胃悪性リンパ腫とは?

胃悪性リンパ腫とは?

胃悪性リンパ腫は、胃の粘膜やその周囲に発生するリンパ系細胞(リンパ球)のがんです。一般的に胃がんと呼ばれるものは胃の粘膜を構成する上皮細胞から発生するのに対し、悪性リンパ腫ではリンパ球という血液細胞の一種から発生する点が大きく異なります。

胃悪性リンパ腫自体がまれな病気で、特徴的な症状もありませんが、自覚症状の現れにくさやリスク因子など、胃がんと共通する要素が数多くあります。胃がん予防は胃悪性リンパ腫の予防にもつながりますので、定期的な内視鏡検査(胃カメラ)で早期発見に努めましょう。

胃悪性リンパ腫をはじめとした胃の病気が気になる方は、箕面市・箕面萱野駅のながい内科循環器内科クリニックへお気軽にご相談ください。

胃悪性リンパ腫の種類と特徴

悪性リンパ腫にはいくつかの種類があり、組織型によって特徴や治療法、予後が異なります。中でも胃に現れるものとしては、「胃MALT(マルト)リンパ腫」と「びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫」の2つが代表的です。

MALTリンパ腫

胃の悪性リンパ腫の中では特によく見られるタイプで、胃の粘膜内にあるリンパ組織(粘膜関連リンパ組織:MALT)から発生します。進行は比較的ゆるやかで、大きな病変でなければ予後も良好なことが多いです。

多くの症例でピロリ菌の感染が見られるのが特徴で、初期のMALTリンパ腫はピロリ菌の除菌治療のみで消失することもあります。内視鏡では胃炎や胃潰瘍に似た所見を示すことが多く、診断には生検による病理診断が重要です。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)

胃悪性リンパ腫の約30~40%を占め、MALTリンパ腫に次いで多い組織型です。MALTリンパ腫に比べて進行が早く、症状も出やすい傾向があります。進行は早いですが、早期かつ適切な治療が完治も十分期待できます。

胃悪性リンパ腫の原因

胃MALT(マルト)リンパ腫

ピロリ菌感染

特にMALTリンパ腫の発症には、ピロリ菌の慢性感染が深く関わっています。ピロリ菌感染により胃粘膜に慢性的な炎症が起こり、本来なら胃には存在しないリンパ組織(MALT)が形成されます。この状態が長く続くと一部のリンパ球に遺伝子異常が蓄積し、がん化してMALTリンパ腫になると考えられています。

びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫

びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫の具体的な原因は明らかになっていませんが、以下が関連している可能性があります。

免疫機能の低下

HIV感染症や臓器移植後の免疫抑制剤の使用、先天性・後天性の免疫不全症候群などの患者様では、胃悪性リンパ腫を含む様々な悪性リンパ腫の発症リスクが上昇します。

自己免疫疾患

シェーグレン症候群、関節リウマチ、全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患の患者様は、悪性リンパ腫のリスクが高まります。これは慢性的な免疫系の異常活性化が関連していると考えられています。

遺伝的要因

家族歴や特定の遺伝子多型が胃悪性リンパ腫のリスクに関連するという報告もありますが、一般的な胃がんに比べると、遺伝的要因の影響は比較的小さいと考えられています。

胃悪性リンパ腫の症状

初期症状

初期の胃悪性リンパ腫(特にMALTリンパ腫)では無症状のことが多く、健康診断や他の疾患の検査で偶然発見されることもあります。自覚症状としては以下が挙げられますが、他の消化器疾患でも広く見られる症状であるため、症状から胃悪性リンパ腫を疑うのは困難です。的確な鑑別を行うためにも、症状が見られる場合には早めに受診してください。

  • 軽度の上腹部不快感
  • 胃もたれ感
  • 食後の膨満感
  • 食欲不振 など

進行した場合の症状

病変が大きくなる、あるいは悪性度の高いリンパ腫(DLBCL)になると、徐々に症状が現れるようになります。ただし、進行した胃悪性リンパ腫の症状も他の胃疾患(胃炎、胃潰瘍、胃がんなど)と重なる部分が多いため、症状だけで診断することは困難です。下記のような症状が続く場合は、直ちに受診して適切な検査を受けてください。

  • 持続的な上腹部痛
  • 著しい食欲低下
  • 急な体重減少
  • 吐き気、嘔吐
  • 黒色便(血が消化されて黒くなった便)
  • 全身倦怠感やめまい(貧血によるもの) など

胃悪性リンパ腫の検査と診断

胃内視鏡検査(胃カメラ検査)

内視鏡を口から挿入して胃の内部を直接観察します。胃悪性リンパ腫の内視鏡での所見は様々で、以下のようなパターンがあります。

  • 粘膜のびらんや発赤(特にMALTリンパ腫)
  • 隆起性病変(ポリープ状やなだらかな隆起)
  • 胃壁の肥厚や硬化
  • 巨大なひだ(胃の粘膜のしわ) など

 

組織検査(生検)

内視鏡を使って病変部から組織を採取(生検)し、顕微鏡で詳しく調べます。胃悪性リンパ腫の診断には複数箇所からの十分な量の組織採取が重要です。また、MALTリンパ腫が疑われる場合は、同時にピロリ菌感染の有無も調べます。

超音波内視鏡検査(EUS)

通常の内視鏡に超音波装置を組み合わせた検査で、胃壁や周囲のリンパ節の状態を詳細に観察できます。腫瘍の深達度(胃壁のどの深さまで広がっているか)を評価するのに有用です。

CT検査

病変の広がりや周囲のリンパ節腫大、他の臓器への転移がないかを調べます。胃悪性リンパ腫は、胃壁の肥厚や胃周囲のリンパ節腫大としてCT画像に写り込むことが多いです。

※当院で行っていない検査が必要な場合は、提携先医療機関と連携して実施します

胃悪性リンパ腫の治療

胃悪性リンパ腫の治療方針は、組織型、病期(ステージ)、患者様の年齢や全身状態などを考慮して決定します。

ピロリ菌の除菌治療

初期のMALTリンパ腫でピロリ菌陽性の場合は、まず除菌治療を行い、その後の経過を観察します。ピロリ菌の除菌が完了すれば、高い確率で腫瘍も消失します。ただし、除菌治療を行っても改善が見られない場合は、以下の両方を検討します。

放射線療法

除菌治療が無効なMALTリンパ腫や、一部のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療では、放射線療法も選択肢となります。胃とその周囲に放射線を照射し、悪性リンパ腫の増殖を抑えます。後述する化学療法と併用することもあります。

化学療法(抗がん剤治療)

進行例や複数の臓器に病変がある場合には、抗がん剤治療も選択肢となります。

手術

基本的に胃悪性リンパ腫への手術の適応はありませんが、内視鏡やCTなどでは診断が難しい場合や、治療中に穿孔(胃に穴が開く)や出血などの合併症を起こした場合に検討されることがあります。

※当院で行っていない治療は、提携先医療機関と連携して実施します

治療後の経過観察

治療が終了した後も、再発がないか定期的に経過観察を行うことが重要です。特に治療後2~3年は再発のリスクが高いため、数か月ごとに内視鏡検査やCT検査を行います。MALTリンパ腫で除菌治療が成功した場合でも、一部は再発することがあるため、長期的な経過観察が必要です。

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