胃腺腫とは?

胃腺腫は、胃の粘膜に発生する良性腫瘍の一種です。胃の表面を覆う粘膜細胞が異常に増殖することで生じます。胃腺腫の多くは無症状で、健診としての内視鏡検査(胃カメラ検査)で偶然発見されることがほとんどです。主に高齢者に多く見られる傾向があり、若年者ではあまり見られません。
基本的には良性の病変ですが、一部は時間の経過とともに悪性化(胃がんに変化)する可能性があるため、定期的な経過観察あるいは早期の治療が重要です。胃腺腫について不安や疑問がある方は、どうぞお気軽に箕面市・箕面萱野駅のながい内科循環器内科クリニックへご相談ください。
胃腺腫の症状
胃腺腫があってもほとんどの場合で無症状です。そのため、多くの場合は健康診断や人間ドック、あるいは全く別の症状で行った胃カメラ検査で偶然発見されます。
ただし、以下のような場合には症状が現れることもあります。これらの症状は胃腺腫以外の疾患でも起こりうるため、症状があった場合は胃腺腫だけでなく、様々な可能性を考えて検査を行う必要があります。
腺腫が大きくなった場合(特に3cm以上)
- 胃の不快感、食後の膨満感など
表面に潰瘍ができた場合
- 胃痛、悪心、吐き気など
出血を伴う場合
- 貧血症状(めまい、倦怠感)、吐血、黒色便など
胃腺腫の種類と特徴
胃腺腫は大きく分けて「腸型腺腫」と「胃型腺腫」の2つのタイプに分類されます。
腸型腺腫
胃腺腫の中でも特に多いタイプで、腸の粘膜に似た組織からなる腺腫です。胃の中でも特に前庭部(胃の出口付近)に好発します。内視鏡検査では、表面に凹凸があり赤みを帯びた隆起として観察されることが多いです。腸型腺腫は一般的に良性であり、がん化するリスクは比較的低いとされていますが、大きさが2cm以上のものや表面に不整な凹凸がある場合は、悪性化のリスクが高まります。
胃型腺腫
腸型腺腫に比べて頻度は低いですが、悪性化のリスクが高いとされるタイプです。胃本来の粘膜に似た組織からなり、さらに「腺窩上皮型」と「幽門腺型」に分けられます。
- 腺窩上皮型:胃の表面を覆う細胞に似た組織からなる腺腫
- 幽門腺型:胃の幽門部(出口付近)にある腺に似た組織からなる腺腫
胃腺腫の原因
胃腺腫が発生する原因はまだ完全には解明されていませんが、以下のような要因が関与していると考えられています。
慢性胃炎(ピロリ菌感染)
胃粘膜の炎症が長期にわたると胃腺腫の発生率が上がります。慢性胃炎は主にピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)の長期感染が原因で起こり、胃腺腫以外にも胃潰瘍や十二指腸、胃がんなど様々な消化器疾患のリスク因子となります。
遺伝的要因
一部の胃腺腫では、特定の遺伝子の異常が発症に関わっているという研究結果もあります。
環境要因と生活習慣
高塩分・高脂肪食の過剰摂取や野菜や果物の摂取不足、喫煙、過度なアルコール摂取などの生活習慣も、胃腺腫のリスクを高める可能性があります。これらは胃炎を悪化させたり、発がん物質への暴露を増やしたりすることで影響すると考えられています。
胃の手術
胃の一部を切除する手術(胃切除術)を受けた方は、残った胃の環境が変化することで、腺腫が発生するリスクが高まることがあります。
加齢
胃腺腫は年齢とともに発生リスクが上昇し、60歳以上の高齢者に多く見られます。これは長年にわたる様々な危険因子への暴露と、細胞の修復能力の低下が関係していると考えられています。
胃腺腫の検査と診断
胃内視鏡検査(胃カメラ検査)
口または鼻から細い内視鏡を挿入し、胃の内部を直接観察します。腺腫は通常、白色調または淡い赤色調の平坦な隆起として観察されます。
組織検査(生検)
内視鏡検査時に病変の一部を採取(生検)し、顕微鏡で詳しく調べる検査です。腺腫の詳細やがん化の兆候がないかを確認します。
超音波内視鏡(EUS)
大きな病変の場合、胃の壁内での深さを評価するために行うことがあります。
CT検査、MRI検査
大きな病変やがんの可能性が高い場合に、周囲のリンパ節や他の臓器への広がりがないかを確認するために行います。
※当院で行っていない検査が必要な場合は、提携先医療機関と連携して実施します
腺腫内がんの可能性について
生検で得られる組織は病変の一部のみのため、全体像を把握できないこともあります。そのため、生検で得られなかった部分に早期がんが含まれている可能性も否定できません。特に大きな病変の場合、生検で腺腫と診断されたにもかかわらず、全て切除したら早期胃がんだったということもあります。
このように、腺腫の一部にすでにがんが発生している状態を「腺腫内がん」と呼びます。リスクが高い腺腫は全体を切除して詳しく調べる必要があります。
胃腺腫の治療
経過観察
小さな腺腫(一般的に1cm未満)で悪性化のリスクが低い場合は、定期的な内視鏡検査による経過観察に留めます。ただし、以下のような場合は積極的な治療を検討します。
- 大きな腺腫(一般的に2cm以上)
- 形態や表面構造から悪性化の可能性が高い
- 生検の結果、高度異型や一部にがんの疑いがある
- 経過観察中に増大傾向が見られた など
内視鏡治療
多くの場合で最初に選択肢となるのが内視鏡を使った治療で、内視鏡(胃カメラ)を使って病変部を直接観察しながらスコープに備わった処置具で腺腫を切除します。内視鏡治療後は病理検査で最終診断を行い、腺腫内にがんが含まれていないか、完全に切除できているかを確認します。がんが含まれている場合や切除が不完全な場合は、追加治療が必要になることもあります。
手術
以下のような場合は、外科手術(胃の一部または全部を切除)を検討することもあります。
- 内視鏡では対応できないほど腺腫が大きい場合
- 多発性の腺腫があり、内視鏡治療では取り切れない場合
- 内視鏡的治療後の病理検査で、深部までがんが及んでいると判明した場合 など
※当院で行っていない治療は、提携先医療機関と連携して実施します