機能性ディスペプシアとは?

機能性ディスペプシア(FD:Functional Dyspepsia)は、胃カメラなどの検査で明らかな異常が見つからないにもかかわらず、みぞおちの痛みや胃もたれなどの不快な症状が慢性的に続く病気です。特に30~50代の働き盛りの年代に多く見られ、近年では増加傾向にあります。ストレスや生活習慣が深く関与するため、「現代病」の1つと言えるでしょう。
辛い症状が続いているものの、「病院に行くほどでもない」と我慢されている方も多いのですが、適切な治療を受ければ症状の改善が期待できます。胃の不調でお悩みの方は、箕面市・箕面萱野駅のながい内科循環器内科クリニックへお気軽にご相談ください。
機能性ディスペプシアのタイプと症状
機能性ディスペプシアの症状には、大きく「食後膨満感(食後のお腹の張り)」「早期膨満感(すぐお腹いっぱいになる)」「心窩部痛(みぞおちの痛み)」「心窩部灼熱感(胸焼け付近が熱くなる感覚、胸焼け)」の4つが挙げられます。これらの症状の現れ方に応じて、以下の2つのタイプに分けられます。
食後愁訴症候群(PDS)
食後膨満感や早期膨満感などの食事に関連した症状が中心となるタイプです。
心窩部痛症候群(EPS)
食事とは無関係に心窩部痛や心窩部灼熱感などの症状が現れるタイプです。
機能性ディスペプシアの原因
機能性ディスペプシアの正確な原因はまだ完全には解明されていませんが、以下のような要因が関与していると考えられています。
胃の運動機能の低下
食べ物を消化し、十二指腸へ送り出す胃の動きが鈍くなることで、食べ物が胃に長く留まり、胃もたれなどの症状を引き起こします。
内臓知覚過敏
通常なら感じないような胃の膨らみや動きを、過敏に感じてしまう状態です。胃が少し膨らんだだけで強い不快感が生じます。
ピロリ菌感染
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)の感染が症状の原因となることもあります(ピロリ菌関連ディスペプシア)。除菌治療により症状が改善する例もあります。
心理的要因
胃と脳は自律神経でつながっているため、互いに影響を及ぼし合うことが分かっています(胃脳相関)。そのため、強いストレス、不安、うつ状態などの心理的要因が機能性ディスペプシアの原因となることもあります。
生活習慣
以下のような生活習慣も症状の悪化につながります。
- 不規則な食生活
- 早食い
- 脂っこい食事の過剰摂取
- 睡眠不足
- 喫煙
- 過度のアルコール摂取 など
機能性ディスペプシアの検査と診断
機能性ディスペプシアの診断には複雑な基準があります。まず、以下のような診療を行って他の病気(胃潰瘍、胃がん、逆流性食道炎など)を除外することから始まります。病気の可能性が除外され、上述の症状が6か月以上前に見られ、直近の3か月以上続いている場合に機能性ディスペプシアと診断します。
問診
医師による問診で以下を確認します。現れている症状の種類や程度、期間などから必要な検査を検討します。
- いつから症状があるか
- どのような時に症状が出るか(食後・空腹時など)
- 症状のパターンや強さ
- 生活習慣や精神的ストレスの有無
- 服用している薬の確認 など
胃内視鏡検査(胃カメラ検査)
胃や十二指腸に病気がないか確認します。機能性ディスペプシアでは、症状を説明できるような明らかな消化管の異常(炎症や潰瘍、腫瘍など)は見つかりません。
ピロリ菌検査
内視鏡や血液検査、便検査などによりピロリ菌感染の有無を調べます。陽性の場合は除菌治療を検討します。
血液検査・腹部超音波検査
肝臓や膵臓の疾患、貧血、感染症などの可能性を調べます。
機能性ディスペプシアの治療
薬物療法
症状に応じて以下のような薬剤を使用します。
- プロトンポンプ阻害薬[PPI]、H2受容体拮抗薬:胃酸分泌を抑制する薬でみぞおちの痛みなどを抑えるために使用します
- 消化管運動改善薬:胃の動きを良くして胃の不快感を改善します
- 漢方薬:六君子湯(食欲不振、胃もたれに効果的)、半夏瀉心湯(みぞおちの痛み、ストレス関連の症状に効果的)などを使用します
- 抗不安薬・抗うつ薬(小用量):特に精神的要因が強い場合や難治例に検討します など
ピロリ菌の除菌治療
ピロリ菌陽性の方には除菌治療を行います。
心理療法
ストレスや不安が強い場合は、以下のようなアプローチも効果的です。必要に応じて心療内科とも連携します。
- 認知行動療法
- リラクセーション法の習得
- ストレスコーピング(ストレスへの対処法)のトレーニング など
日常生活での対策
機能性ディスペプシアの症状を和らげるために、日常生活で心がけていただきたいポイントをご紹介します。上述した治療と並行しながら、無理のない形で実践しましょう。
食事に関する工夫
- 1日3食、規則正しく摂取する
- 腹八分目を心がけ、食べ過ぎない
- ゆっくりとよく噛んで食べる(一口30回程度が理想)
- 食事と就寝の間隔を3時間以上あける
- 温かい食事を心がける(冷たい食べ物・飲み物は胃の動きを鈍らせる) など
避けた方が良い食品・飲み物
- 高脂肪食(脂っこい料理)
- 刺激物(辛い食べ物、酸味の強い食品)
- カフェイン(コーヒー、紅茶、緑茶などは控えめに)
- アルコール(特に強い酒)
- 炭酸飲料 など
※少量であれば問題ないこともありますので、医師と相談しながら調整します
ストレス解消法を見つける
- 適度な運動(ウォーキング、ヨガなど)
- 十分な睡眠(7~8時間)
- 趣味や楽しみの時間を持つ など
その他の注意点
- 禁煙(喫煙は胃粘膜の血流を低下させる)
- 服用中の薬の見直し(胃の機能に影響するものの場合、医師に相談のうえで実施)
- 姿勢を良くする(前かがみの姿勢は胃を圧迫) など