食道粘膜下腫瘍とは?

食道粘膜下腫瘍は、食道の壁の中の「粘膜下層」と呼ばれる部分から発生する腫瘍のことです。表面の粘膜(内側の層)には異常が見られず、下の層から盛り上がってくるという特徴があり、食道の内側に突き出た「こぶ」のように見えます。
多くの食道粘膜下腫瘍は良性で、ゆっくりと成長します。しかし、中には悪性(がん)のものもあるため、適切な診断と経過観察が必要です。
「喉に何かある」と言われて不安に思われている方も多いかと思いますが、当院では専門的な知識を持った医師が丁寧に診断・説明いたします。食道の病気でお困りの時は、箕面市・箕面萱野駅のながい内科循環器内科クリニックへお気軽にご相談ください。
食道粘膜下腫瘍の症状
食道粘膜下腫瘍の多くは無症状です。良性であっても、腫瘍が大きくなると食道の内腔(通り道)を狭くするため、以下のような症状が現れることがあります。
- 飲み込みにくさ(嚥下困難)
- 胸の痛みや不快感
- 喉の違和感
- 食べ物がつかえる感じ
- 胸焼け など
悪性の腫瘍の場合は、急速に大きくなったり、体重減少や食欲不振などの全身症状を伴ったりすることがあります。しかし、これも初期段階では症状がないことがほとんどです。
食道粘膜下腫瘍の種類
平滑筋腫
食道粘膜下腫瘍の中で最も多いタイプで、食道の中部から下部に多く見られます。ほとんどが良性で、非常にゆっくりと成長するのが特徴です。
顆粒細胞腫
神経組織から発生すると考えられている腫瘍で、平滑筋腫に次いで多く見られます。ほとんどが良性ですが、まれに悪性化することもあります。
脂肪腫
脂肪組織でできた腫瘍で、食道粘膜下腫瘍の中でもまれな疾患です。ほとんどが良性で、治療を必要としないことが多いです。
悪性腫瘍
粘膜下層から発生する悪性腫瘍としては、平滑筋肉腫(筋肉の悪性腫瘍)やGIST(消化管間質腫瘍)などがあります。いずれも比較的まれな疾患ですが、腫瘍の大きさが急に増加したり、表面に潰瘍ができたりする場合は注意が必要です。
食道粘膜下腫瘍の検査と診断
胃内視鏡検査(胃カメラ検査)
食道粘膜下腫瘍の発見に最も重要な検査です。通常の内視鏡検査では、粘膜下腫瘍は表面が平滑で柔らかく、粘膜の色は正常に見えます。見た目からは鑑別困難な症例も多いので、内視鏡に備わった鉗子を使い、表面の凹凸や硬さを調べながら診断を絞り込みます。
必要に応じて組織採取(生検)を行い、確定診断を試みることもあります。しかし、腫瘍は粘膜の下にあるため、表面から採取しても腫瘍組織を採れず、診断できないこともあります。
超音波内視鏡(EUS)
通常の内視鏡に超音波装置を組み合わせた超音波内視鏡を使い、腫瘍の大きさ、形状、内部の性状、発生している層などを詳しく確認します。通常の内視鏡では困難な腫瘍の種類の推定や良性・悪性の鑑別に役立ちます。
超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診(EUS-FNA)
超音波内視鏡を使いながら細い針を腫瘍に刺して組織を採取する方法です。粘膜下腫瘍の正確な診断に役立ちます。
画像検査(CT・MRI)
腫瘍の広がりや周囲の臓器との関係、転移の有無などを確認するために行います。特に大きな腫瘍や悪性が疑われる場合に重要です。
※当院で行っていない検査は、提携する専門機関と連携して実施します
食道粘膜下腫瘍の治療
経過観察
小さな腫瘍で症状がなく、検査で悪性を疑う所見がない場合は、定期的な内視鏡検査による経過観察を選択することが多いです。腫瘍の状態にもよりますが、6か月から1年ごとの内視鏡検査をご提案します。
しかし、以下の場合には積極的な治療も考慮する必要があります。
- 腫瘍のサイズが大きい(一般的に2cm以上)
- 経過観察中に急速に増大する
- 飲み込みにくさなどの症状を伴う
- 超音波内視鏡などで悪性を疑う所見がある など
内視鏡的切除術
比較的小さな腫瘍で、病変部が粘膜下層に留まっている場合には、内視鏡を使って腫瘍を切除します。開腹せずに腫瘍を切除できるうえ、症例によっては当院でも日帰りで実施できるため、体への負担を最小限に抑えられます。
ただし、大きな腫瘍や筋層に深く入り込んでいる腫瘍の場合、内視鏡では取り切れない可能性もあります。複雑な症例の場合には、提携先の医療機関をご紹介して後述の専門的な治療を実施します。
外科的治療(手術)
食道の一部を外科的に切除することで、腫瘍を取り除きます。大きな腫瘍や、悪性が疑われる場合、内視鏡的切除が困難な位置にある場合などに行われます。近年では胸腔鏡・腹腔鏡を用いた低侵襲な手術も広まっておりますので、患者様の状態やご希望に応じて最適な手術法が選択されます。
化学療法(薬物治療)
抗がん剤を使ってがん細胞の増殖を抑制します。悪性の食道粘膜下腫瘍が他の臓器へ転移している場合や、手術後の再発予防として用いられます。入院は必要ありませんが、長期間の服薬が必要で、副作用の管理も重要になります。
日常生活での注意点
検査で食道粘膜下腫瘍が見つかった場合でも過度に心配する必要はありません。多くは良性で進行が遅いため、定期的に診察と検査を受けて異常がなければ、いつも通りの生活を送っていただけます。ただし、以下のような症状が現れた場合は早めに受診してください。
- 飲み込みにくさが出てきた
- 胸の痛みや不快感が続く
- 食べ物がつかえる感じがする
- 急に体重が減少した など