食道異物とは?

飲み込んだ物が消化管に詰まり、停滞している状態を総称して消化管異物と言います。消化管異物のうち、食道に詰まってしまったものが食道異物です。いわゆる「喉に引っかかっている」状態で、誤って飲み込んだり、食事中にうっかり飲み込んでしまったりすることで発生します。
箕面市・箕面萱野駅のながい内科循環器内科クリニックでは、丁寧に診察し、必要に応じて安全に異物を取り除きます。自然に解消することもありますが、放置すると体に害を及ぼすものもありますので、「何か飲み込んでしまったかも」と思った際はためらわずにご連絡ください。
食道異物が発生する主な原因
食事中の不注意
急いで食事をしたり、よく噛まずに飲み込んだりすると、特に魚の骨や大きな肉の塊などが食道に詰まるリスクが高まります。会話しながらの食事や、テレビを見ながらの「ながら食い」も注意力が散漫になるため危険です。
よくある異物
- 魚の骨(特にアジやサバなどの小骨)
- 薬の包装シート(PTPシート)
- 肉の塊(よく噛まずに飲み込んだ場合)
- 餅(粘り気が強いものは特に注意が必要) など
幼児の誤飲
乳幼児は発達段階で周囲の物に興味を示し、手に取ったものを口に入れてしまいます。特に1~3歳の子どもで多く見られます。
よくある異物
- 硬貨(特に子どもの場合)
- ボタン電池(おもちゃなどに使われているもの)
- 小さなおもちゃのパーツ
- 磁石 など
義歯の不適合や歯のトラブル
義歯(入れ歯)が合わなくなっていたり歯が欠けていたりすると、食べ物を十分に噛み砕けず、大きな塊のまま飲み込んでしまうことがあります。また、義歯自体が緩んで外れて、気づかないうちに飲み込んでしまうケースもあります。
高齢者や認知症患者での誤嚥
加齢により飲み込む機能(嚥下機能)が低下したり、認知症で注意力が散漫になったりすると、食事中に異物を誤って飲み込むリスクが高まります。また、食べ物の認識力が低下していることも要因となります。
意識障害や酩酊状態
お酒を飲んで酔っている状態や、薬の影響で意識がはっきりしない状態では、異物を誤って飲み込むリスクが高まります。特に宴会や飲み会などの場では、笑いながら食べたり、急いで飲み込んだりする機会が増えるため注意が必要です。
食道異物の症状
飲み込みにくさ、喉や胸の違和感・痛み
特に多い症状は、「何かが引っかかっている感じ」「飲み込むと痛い」といった違和感や痛みです。異物の大きさや形状、位置によって症状の程度は異なります。通常、喉の奥(上部食道)に異物がある場合は強い違和感があり、下部食道(胃に近い側)になるほど症状が曖昧になることもあります。
咳や嘔吐、唾液の増加
異物が食道にあると咳が出たり、吐き気を感じたりすることがあります。また、唾液の分泌が増えて、つばが飲み込みにくくなることもあります。
胸焼けや胸痛
異物が食道の粘膜を刺激すると、胸焼けや胸の痛みを感じることがあります。特に尖った異物(魚の骨や、薬を包装するPTPシートなど)の場合、食道に刺さって鋭い痛みを伴うことがあります。食道下部に異物がある場合は、胸の奥や背中に痛みを感じることもあります。
呼吸困難や窒息(重症例)
大きな異物が食道入口部に詰まると、気道(喉頭や気管)を圧迫して呼吸が困難になることがあります。また、嘔吐した内容物が気道に入り込む(誤嚥)リスクもあります。これらの症状は緊急性が高いため、すぐに受診してください。
異物の種類とリスク
尖ったもの(魚骨、PTPシートなど)
魚の骨やPTPシートなどの尖った異物は、食道の粘膜を傷つけたり、最悪の場合は穿孔(食道に穴が開くこと)を起こしたりするリスクがあります。
ボタン電池、磁石など
ボタン電池は特に危険で、食道に留まると短時間で化学反応を起こし、電解液の漏出や電気分解による組織損傷を引き起こします。重度の粘膜障害が生じることもあるため、緊急で取り出す必要があります。また、複数の磁石を飲み込んだ場合は、腸管を挟んで引き合い穿孔を引き起こす可能性もあります。
小さな異物(ビー玉など)
直径1cm未満の滑らかな小さな異物(ビー玉など)は、自然に胃に落ちて最終的に便と一緒に排出されることもあります。症状がなく、体に害がなければ、経過観察でも問題ないことが多いです。
大きな異物
大きな異物は食道が狭まっている部分で停滞しやすく、そのままでは消化管の中を通りません。自然に排泄されないので、摘出が必要になることが多いです。
食道異物の検査と診断
レントゲン検査、CT検査
まずはX線検査(レントゲン)で、異物の有無や位置を確認します。レントゲンで見えにくい異物(プラスチック製品など)や、食道壁の状態も確認したい場合はCT検査を行うことがあります。
胃内視鏡検査(胃カメラ検査)
細い管状のカメラを口から挿入し、食道内を直接観察して異物の有無や種類、周囲の粘膜の状態を詳しく確認します。また、特殊な器具(鉗子など)を用いて、その場で異物を安全に取り出すこともできます。
異物の種類や位置、症状の重症度に応じて対応を決定
診察や検査の結果から、異物の種類、大きさ、停滞している時間、患者様の症状などを総合的に評価し、対応を決定します。特に鋭利な異物や呼吸困難を起こしているもの、健康へ影響するものは迅速に取り出す必要があります。
緊急で摘出が必要なものの例
- 内服薬の包装(PTPシート)
- 太い魚骨・針
- 義歯
- ボタン電池
- 複数飲み込んだ磁石 など
食道異物の治療
経過観察
小さく滑らかな異物で症状がなく、画像検査でも食道に損傷がないと判断された場合は、自然に胃に落ちるのを待ちます。ほとんどの場合で最終的に便として排出されます。
内視鏡による摘出
内視鏡に取り付けた専用の器具(把持鉗子、スネア、バスケットなど)を用いて異物をつかみ、慎重に取り出します。鋭利な異物の場合は、キャップ付きスコープや透明フードなどを使用して、食道壁を保護しながら安全に摘出します。
外科的治療(手術)
内視鏡での摘出が困難な場合や、すでに食道穿孔が生じている場合には手術が必要となることもあります。喉や胸の一部を切り、食道を切開して異物を取り出します。特に長時間経過した鋭利な異物や食道壁に深く埋没した異物などは、より慎重な対応が求められます。