好酸球性食道炎とは?

好酸球性食道炎(EoE)は、食道に好酸球という白血球の一種が過剰に集まることで起こる炎症です。主に食物アレルギーが原因となって起こり、食道の粘膜が慢性的な炎症を起こします。胃酸の逆流(逆流性食道炎など)とは異なるメカニズムで炎症が起こるため、一般的な胃酸抑制の治療では改善しません。
好酸球性食道炎は1990年代に医学的概念が確立された比較的新しい病気で、現在でも詳しいメカニズムについては研究が続けられています。根治が難しく、厚生労働省により難病指定されている病気ですが、適切な治療によって症状のコントロールが可能です。
「食べ物がつかえる」「食事中に胸が苦しくなる」といった症状でお悩みの方は、箕面市・箕面萱野駅のながい内科循環器内科クリニックへお気軽にご相談ください。
逆流性食道炎との違い
好酸球性食道炎と逆流性食道炎は、どちらも食道の炎症を引き起こす疾患ですが、それぞれの原因やメカニズムが異なります。
好酸球性食道炎
好酸球性食道炎では主にアレルギー性の炎症が原因となります。特定の食べ物(牛乳・小麦・卵・大豆・ナッツ類など)や環境アレルゲンに対する免疫反応により、白血球の一種である好酸球が食道の粘膜に集まり、慢性的な炎症を引き起こすのです。発症には遺伝的な要因も関与していると考えられています。
症状としては、食事中の胸痛や胸焼け、食べ物がつかえる感覚(嚥下困難)、食物がつまる(食物閉塞)などが特徴的です。特に固形物を食べる際に症状が強く現れることが多く、進行すると食事に対する恐怖感や食欲低下を引き起こすこともあります。
若年から成人までの男性に多く、アトピー性皮膚炎や気管支喘息などの他のアレルギー疾患を合併していることも少なくありません。
逆流性食道炎
逆流性食道炎では胃酸の逆流が主な原因です。通常、食道と胃の間には下部食道括約筋というゲートのような筋肉があり、胃酸が食道に逆流するのを防いでいます。しかし、この筋肉が正常に働かなかったり、加齢や生活習慣によって緩んだりすると、胃酸が食道に逆流して食道の粘膜を刺激し、炎症を起こします。
症状は主に胸焼け(胸のあたりが焼けるような痛み)や呑酸(酸っぱい液体が喉まで上がってくる感覚)、胸痛、咽頭痛、慢性的な咳などが特徴です。食後に横になった時や前かがみになった時に症状が悪化することが多いです。脂っこい食事や過食、飲酒、喫煙、肥満などが症状を悪化させる要因となります。好酸球性食道炎と比較すると、中高年に多く見られ、男女差はあまりありません。
好酸球性食道炎の症状
- 食物のつかえ感
- 飲み込みにくさ(嚥下困難)
- 胸の痛みや不快感
- 食事中の胸痛
- 食べ物の通過障害(食べても吐いてしまう) など
好酸球性食道炎の原因
食物アレルギー
好酸球性食道炎の主な原因で、以下のような食品が該当します。ただし、アレルギーの元が不明瞭な好酸球性食道炎も存在するため、必要に応じてアレルギー専門科と連携して検査を行います。
- 乳製品、卵、小麦、大豆(特に小児)
- 魚介類、ナッツ類
- とうもろこし、じゃがいも
- 牛肉、鶏肉 など
他のアレルギー疾患との併発について
好酸球性食道炎は比較的まれな病気ですが、最近では内視鏡検査の受診率の増加に伴って診断される機会が増えてきました。その結果、30~50歳代の比較的若い男性に多いこと、アレルギー疾患(気管支喘息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなど)との併発が多いことなどが判明しつつあります
あくまで可能性の話ではありますが、治療を続けても逆流性食道炎が改善せず、他にアレルギー疾患を抱えている場合には好酸球性食道炎の可能性があります。一度、当院へご相談ください。
好酸球性食道炎の検査と診断
胃内視鏡検査(胃カメラ検査)
食道の状態を直接観察する基本的な検査です。特徴的な所見として以下があり、逆流性食道炎との鑑別の指標となります。
- 食道壁の同心円状の溝(輪状溝)
- 線状の傷(縦走溝)
- 白い斑点(白斑)
- 血管の透けが悪い(粘膜の浮腫) など
組織検査(生検)
内視鏡検査時に上述した所見がある場合には、食道粘膜の一部を採取して顕微鏡で調べる(生検)ことで診断をつけます。
好酸球性食道炎の治療
根治が難しい疾患ではありますが、適切な管理により症状の改善が可能です。薬物療法や食事療法を組み合わせた総合的なアプローチにより、患者様の症状を効果的にコントロールしていくことが治療の中心となります。
経過観察
症状が軽度であれば、経過観察を行うこともあります。ただし、炎症の放置によって将来的に症状の悪化を起こすこともあるので、定期的に内視鏡検査を行って変化の有無を確認します。
薬物療法
胃酸を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬:PPI)や免疫反応を抑える薬(ステロイド、抗ロイコトリエン拮抗薬)を使用して症状を抑えます。好酸球性食道炎は再発を起こすことが多いため、症状が落ち着いても薬物療法は継続する必要があります。薬剤や投薬の期間は患者様の様子を見ながら調整します。
食事療法
アレルギーの原因となる食物を食べないようにします。アレルギー疾患に対する基本的な治療法ですが、好酸球性食道炎の場合は原因となる食品がよく分からないことも多々あります。
内視鏡治療
食道の狭窄を起こしている重症の好酸球性食道炎に対しては、内視鏡を使って食道を広げる治療を行うこともあります。バルーンと言う医療用の風船を食道内に留置し、狭窄部位を広げることで症状の緩和をはかります。
※提携先医療機関と連携して実施します