十二指腸がんとは?

十二指腸がんは、小腸の最初の部分である十二指腸に発生する悪性腫瘍です。十二指腸は胃から続く消化管の一部で、食べ物の消化や栄養の吸収において重要な役割を担っています。他の消化管がん同様に初期の自覚症状に乏しいので、早期発見が極めて重要です。
しかし、十二指腸がんは消化管がんの中では比較的まれで、早期発見が難しいことから、進行がんになるまで放置されてしまうことも少なくありません。箕面市・箕面萱野駅のながい内科循環器内科クリニックでは専門医による丁寧な検査と診断を行い、十二指腸がんの早期発見に努めています。気になる症状や消化管がんへの不安がある方は、お気軽にご相談ください。
十二指腸がんの種類と特徴
乳頭部がん
十二指腸には、膵臓や胆管からの消化液(それぞれ膵液、胆汁)が流入する乳頭部という部位があります。ここにがんが生じると、消化液の流れを塞いで臓器の機能に影響を及ぼします。
非乳頭部がん
乳頭部以外の十二指腸に発生するがんで、さらに発生部位により上部、中部、下部に分類されます。症状が現れにくく、発見が遅れる傾向にあります。
十二指腸がんの進行度と肖像
自覚症状が現れにくい十二指腸がんですが、進行するにつれて徐々に様々な症状が現れます。がんが進行して転移を起こせば命に関わりますので、早期発見・早期治療が重要です。
※がんの進行度について詳しくはこちらのページもご覧ください
早期十二指腸がん(ステージ0~1)
初期の段階では全くの無症状であることが多く、健康診断や他の疾患の検査で偶然発見されることも少なくありません。
進行大腸がん(ステージ2以降)
がんが進行して十二指腸の内腔を狭くしたり、周囲の臓器に転移を起こしたりすると、以下のような症状が現れるようになります。これらの症状が現れている場合には緊急性が高いため、速やかに受診してください。
腹部痛や不快感
持続的または断続的な痛みで、食後に悪化することがあります。
黄疸(おうだん)
乳頭部や乳頭部付近のがんが胆管を圧迫・閉塞すると、胆汁の流れが滞ってその先にある肝臓の機能を障害します。その結果、肝臓で代謝される黄色の色素(ビリルビン)が血液中に過剰になるため、皮膚や白目が黄色くなる黄疸の症状が現れます。
なお、乳頭部がんでは比較的早期から黄疸が現れることがあるため、他の部位のがんよりも早く発見される傾向があります。
食欲不振、体重減少
がんの進行に伴う全身状態の悪化や食べ物の通過障害により、食欲が低下し、体重が減少することがあります。
吐き気・嘔吐
十二指腸の狭窄(きょうさく:内腔が狭くなること)が強くなると、食べ物や消化液が停滞し、吐き気や嘔吐を引き起こします。
吐血、黒色便、貧血
十二指腸がんから出血が起こると、吐血(血を吐く)や黒色便(消化された血液が混じった便)が見られることがあります。慢性的な出血により貧血になると、疲労感やめまいなどの症状も現れます。
十二指腸がんの原因
十二指腸がんの明確な原因はまだ解明されていませんが、以下のような要因がリスクを高めると考えられています。
遺伝的要因
家族に十二指腸がんの方がおられる場合は、発症リスクが高まる可能性があります。
十二指腸腫瘍
十二指腸に生じた腫瘍からがんが発生する可能性もあります。特に腺腫(腺管腺腫や絨毛腺腫)と呼ばれるタイプの腫瘍は、がん化する可能性が比較的高いため、注意して経過観察を行う必要があります。
消化管の慢性的な炎症
消化管に長期にわたる炎症が続くと、細胞のDNA損傷や異常増殖を引き起こし、がん化のリスクが高まります。小腸を含む消化管に慢性的な炎症を引き起こすクローン病などが該当します。
生活習慣要因
以下のような生活習慣は、十二指腸がんを含む消化管がんの発症リスクを高めます。
- 喫煙
- 過度の飲酒
- 高脂肪・高塩分食 など
関連疾患
以下の疾患も十二指腸がんとの関連が示唆されています。
- 胆石症、慢性胆管炎:特に乳頭部がんとの関連が指摘されている
- 十二指腸潰瘍:長期にわたって潰瘍が存在するとがんのリスクが上昇する
十二指腸がんの検査と診断
胃内視鏡検査(胃カメラ検査)
口から細い内視鏡を挿入し、十二指腸の内部を直接観察します。がんの特徴としては隆起性病変(ポリープ状に盛り上がったもの)や潰瘍性病変(くぼんだもの)、粘膜の不整などが見られます。
組織検査(生検)
内視鏡検査時に病変部から組織を採取(生検)し、顕微鏡で詳しく調べます。がんの確定診断や組織型の判断のために重要な検査で、内視鏡検査と同時に実施できるのがポイントです。
超音波内視鏡検査(EUS)
先端に超音波装置の付いた内視鏡で、腫瘍の深達度(どの程度深く浸潤しているか)や、周囲のリンパ節転移、膵臓や胆管などの隣接臓器への広がりを詳しく観察できます。また、必要に応じて針を刺して組織を採取する検査(超音波内視鏡下穿刺吸引法:EUS-FNA)も可能です。
CT検査、MRI検査
CT検査はX線を、MRIは強力な磁石と電波を用いて体の断層画像を撮影する検査です。十二指腸の腫瘍の大きさや広がり、周囲のリンパ節転移、肝臓など他の臓器への転移の有無を確認します。
※当院で行っていない検査が必要な場合は、提携先医療機関と連携して実施します
十二指腸がんの治療
十二指腸がんの治療は、がんの発生部位、大きさ、進行度(ステージ)、組織型、患者様の年齢や全身状態などを考慮して選択します。
手術
外科手術によって十二指腸がんを完全に取り除します。腫瘍の発生部位や進行度によっては十二指腸や膵臓、胆嚢、胆管、胃の一部も切除する必要がありますが、可能な限り消化管の機能を温存できる術式が選択されます。
内視鏡治療
非常に早期の十二指腸がんであれば、内視鏡を使って低侵襲な治療ができることもあります。ただし、技術的に難しく合併症のリスクもあるため、適応は慎重に判断する必要があります。
化学療法(抗がん剤治療)
手術が困難な進行例や転移がある場合、また手術後の再発予防(術後補助化学療法)として行われます。十二指腸がん特有の標準的な薬の組み合わせは確立されていませんが、大腸がんや膵臓がんの治療に準じた薬剤が使用されることが多いです。
放射線療法
放射線を使ってがん細胞の増殖を抑えます。単独で行われることは少なく、手術が困難な症例や手術後の再発予防として、上記の化学療法と組み合わせて行われることがあります。
※当院で行っていない治療は、提携先医療機関と連携して実施します