下痢とは?

下痢とは、便の水分が異常に増え、通常よりも軟らかい、または液状の便が1日に3回以上排泄される状態を指します。腸の運動機能や吸収機能に異常が生じることで、便中の水分量が増加し、下痢が起こります。多くの場合は数日で自然に治まる一過性のものですが、症状が長期間続く場合や重症の場合は、何らかの疾患が隠れている可能性があります。
箕面市・箕面萱野駅のながい内科循環器内科クリニックでは、下痢でお悩みの患者様に対して、適切な検査と治療を提供しています。特に、慢性的な下痢や血便を伴う下痢など、原因不明の症状が続く場合は、内視鏡専門医による大腸内視鏡検査(大腸カメラ)で正確な診断を行います。
下痢の原因
急性の下痢
感染性胃腸炎
ウイルス(ノロウイルス、ロタウイルスなど)や細菌(サルモネラ菌、カンピロバクターなど)、寄生虫による感染で起こります。汚染された食品や水を摂取することで発症し、24~48時間の潜伏期間の後に突然始まる水様下痢が特徴です。多くは数日で自然に治まります。
食中毒
食品中の細菌や毒素により発症します。原因となる食品摂取後、比較的短時間(数時間)で発症することが多く、嘔吐や腹痛を伴うことが特徴です。
薬剤性の下痢
抗生物質や制酸薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの薬剤が原因で下痢が起こることがあります。特に抗生物質は腸内細菌のバランスを崩すことで下痢を引き起こします。
慢性の下痢
過敏性腸症候群(IBS)
ストレスや自律神経の乱れが原因で腸の運動や知覚が過敏になり、慢性的な下痢や便秘を繰り返す機能性疾患です。腹痛を伴うことが多いものの、内視鏡検査では器質的な異常が見つからないことが特徴です。
炎症性腸疾患
潰瘍性大腸炎やクローン病などの慢性炎症性疾患です。血便や粘液便、腹痛を伴う慢性的な下痢が続き、体重減少や全身倦怠感などの全身症状を伴うこともあります。
大腸ポリープ・大腸がん
大腸ポリープや大腸がんでも下痢や血便が見られることがあります。特に高齢者で血便を伴う下痢が続く場合は、大腸がんの可能性を考慮し、内視鏡検査による精査が必要です。
その他の要因
食物不耐症
乳糖不耐症(牛乳に含まれる乳糖を分解できない状態)やグルテン不耐症(小麦に含まれるグルテンに対する不耐症)などで、特定の食品摂取後に下痢が起こります。
甲状腺機能亢進症
甲状腺ホルモンが過剰に分泌される疾患で、代謝が亢進して下痢や体重減少などが現れることがあります。
下痢の症状
典型的な症状
- 軟便や水様便が頻繁に出る
- 腹部のぐるぐる音(腸蠕動音の亢進)
- 便意を我慢できない
- 排便後も残便感がある など
便の性状や回数は原因によって様々で、数回の軽い軟便から、何十回もの水様性下痢まで幅広く見られます。
随伴症状
下痢に伴って現れる症状には以下のようなものがあります。
- 腹痛、腹部けいれん
- 吐き気、嘔吐
- 発熱
- 腹部膨満感
- 肛門部の灼熱感
- 全身倦怠感
- 食欲不振 など
重大な病気の可能性がある症状
以下の症状が下痢とともに現れる場合は、重篤な疾患の可能性があるため、速やかに医療機関を受診してください。
- 血便や黒色便
- 高熱(38.5℃以上)
- 激しい腹痛
- 脱水症状(強い口渇、尿量減少、めまい、意識障害など)
- 著しい体重減少を伴う慢性下痢
- 夜間の下痢や腹痛で睡眠が妨げられる など
下痢の検査
大腸内視鏡検査(大腸カメラ検査)
慢性的な下痢や血便を伴う下痢、原因不明の下痢が続く場合には、大腸内視鏡検査が有効です。肛門から内視鏡を挿入し、大腸の内部を直接観察することで、炎症、潰瘍、ポリープ、腫瘍などの病変を詳細に確認できます。
当院では内視鏡専門医が検査を担当し、患者様の不安や苦痛を最小限に抑える工夫をしています。鎮静剤を用いた苦痛の少ない検査も可能で、検査中はほとんど眠っているような状態で受けることができます。
胃内視鏡検査(胃カメラ検査)
下痢と上腹部症状(胃痛、胸焼けなど)を伴う場合には、胃カメラ検査も重要です。小腸疾患が原因の下痢を疑う場合、十二指腸までの観察を行います。
血液検査・便検査
血液検査では炎症反応(白血球数、CRPなど)、貧血の有無、電解質バランス、肝機能、腎機能などを調べます。便検査では、便中の病原微生物の有無、潜血、白血球などを検査し、感染性の原因や炎症の程度を評価します。
腹部超音波検査(エコー)
腹部の臓器(肝臓、胆嚢、膵臓、腎臓など)の状態を観察し、下痢の原因となる疾患がないかを調べます。
下痢の治療
薬物療法
症状や原因に応じて、以下のような薬剤を使用します。
整腸剤・プロバイオティクス
腸内細菌のバランスを整える薬です。善玉菌を増やすことで腸内環境を改善し、下痢の症状を緩和します。
止瀉薬(下痢止め)
腸の運動を抑える薬です。ただし、感染性下痢や血便を伴う下痢の場合は使用を控えるべきで、医師の指示に従うことが重要です。
吸着剤
腸内の有害物質や病原体を吸着する薬です。食中毒や感染性胃腸炎による下痢に有効です。
抗菌薬
細菌性の感染が確認された場合に使用します。ただし、不適切な抗菌薬の使用は耐性菌を生み出す可能性があるため、医師の処方に従うことが重要です。
補液療法
下痢が続くと脱水や電解質異常を起こすことがあります。経口補水液や点滴によって、失われた水分と電解質を補充します。軽度の脱水であれば、市販の経口補水液や、薄めのスポーツドリンク、お茶などで水分を補給すると良いでしょう。
生活習慣の改善
下痢の回復期には、消化の良い食事から始め、徐々に通常の食事に戻すことが大切です。少量ずつ頻回に食事を摂り、脂っこい食べ物や刺激物、乳製品、アルコールなどは控えましょう。
原因疾患の治療
炎症性腸疾患、大腸がん、甲状腺機能異常など、特定の疾患が下痢の原因である場合は、その疾患に対する適切な治療を行います。
受診のタイミング
早期受診を推奨
- 下痢が1週間以上続く
- 繰り返し下痢を起こす
- 微熱や軽い腹痛を伴う
- 高齢者や基礎疾患(糖尿病、心疾患など)がある方の下痢
- 海外渡航後に発症した下痢 など
速やかな受診が必要
- 血便や黒色便がある
- 高熱(38.5℃以上)を伴う
- 激しい腹痛がある
- 嘔吐が止まらない
- 脱水症状がある(口渇、尿量減少、めまい、意識混濁など)
- 乳幼児や高齢者の激しい下痢 など