大腸腺腫とは?

大腸腺腫は、大腸の粘膜から発生する良性の腫瘍で、一般的に「大腸ポリープ」と呼ばれるものの一種です。多くの場合は自覚症状がなく進行しますが、長期間放置すると一部が大腸がんへと変化する可能性があります。大腸がんは特に大腸腺腫から発生するものが多いため(腺がん)、発見された場合は慎重な経過観察、あるいは早期の切除が推奨されます。
箕面市・箕面萱野駅のながい内科循環器内科クリニックでは、大腸腺腫を含む大腸ポリープの早期発見・早期治療に力を入れています。気になる症状がある方はもちろん、ご家族に大腸がんの方がいる方や健康診断で便潜血陽性と指摘された方も、お気軽に当院までご相談ください。
大腸腺腫(大腸ポリープ)と大腸がんの関係
大腸腺腫のほとんどは良性で、必ずしも治療が必要とは限りません。しかし、大きさが10mmを超えると急激にがんを含む可能性が高まることが分かっています。そのため、大腸腺腫は良性腫瘍ではあるものの、一部は「前がん病変である」という複雑な事情を抱えています。
腺腫のどれががん化するかを事前に判断することは困難ですが、一般的に5mm以上の腺腫は、予防の観点から切除の対象となります。また、形状が不整であったり、凹みがある腺腫は、サイズが小さくても切除が推奨されます。
大腸がんは予防できる
大腸がんの大きな特徴は、腺腫の段階で発見し切除することで「予防できる」ということです。多くのがんは早期発見が目標ですが、大腸がんは腺腫を適切に処置することで、がんになる前に予防できる数少ないがんの1つなのです。
大腸腺腫の症状
無症状
他の大腸ポリープと同様に、大腸腺腫の多くは無症状で進行するため、気づかないうちに大きくなることがあります。健康診断や人間ドックでの便潜血検査で陽性となり、その後の精密検査(大腸カメラ)で発見されることが一般的です。
血便
腺腫の表面が便と擦れて出血を起こすことがあります。血の色や出方によって、出血している場所のある程度の推測が可能です。
鮮血便(明るい赤色)
主に直腸や肛門近くの病変からの出血で、便の表面に付着していることが多いです。トイレットペーパーや下着に付着した血液で気づくケースもあります。
暗赤色、黒褐色
より上部(S状結腸や下行結腸など)からの出血で、血液が腸内で時間をかけて消化されると暗い色になります。
便通異常(下痢・便秘)
大腸腺腫が腸管を刺激することで腸の蠕動運動(腸が内容物を進める波のような動き)が乱れ、下痢や便秘などの便通異常を起こすことがあります。
便の形状変化(便が細くなる)
腫瘍が大きくなると腸管の内腔(中の空洞部分)が狭くなり、便が細くなります。鉛筆のような細い便が続く場合や残便感が生じている場合には注意が必要です。
腹痛、腹部膨満感
大腸腺腫が大きくなると、ガスや便が腫瘍の手前で停滞して腹痛や膨満感(お腹の張り)を引き起こします。また、腫瘍周囲が炎症によって鈍い痛みを感じることもあります。
貧血
大腸腺腫からの出血が長期間続くと、めまいや立ちくらみ、動悸、全身倦怠感などの貧血症状を引き起こすこともあります。
大腸腺腫の特徴とリスク因子
好発部位
大腸腺腫を含む大腸ポリープは大腸のどの部位にも発生する可能性がありますが、特にS状結腸と直腸に多く見られます。これらの部位は大腸カメラ検査でも比較的観察しやすい場所であるため、定期的な検査によって早期発見につながることが多いです。
リスク要因
- 遺伝的要因:大腸がんや大腸腺腫の家族歴がある方は、リスクが高まります。
- 生活習慣:高脂肪・高タンパク質の食事、運動不足、肥満、喫煙、過度の飲酒などがリスク因子となります。
- 加齢:加齢とともに発症リスクが高まり、特に40歳以上の方は注意が必要です。
- 既往歴:過去に大腸腺腫が見つかった方は、新たな腺腫が発生するリスクが高まります。
- 炎症性腸疾患:潰瘍性大腸炎やクローン病など、慢性的な腸の炎症がある方は大腸ポリープを発症する確率が高まります。
大腸腺腫の検査と診断
大腸内視鏡検査(大腸カメラ検査)
カメラ付きの細い管を肛門から挿入し、大腸内部を直接観察します。精度が高く、小さな病変も発見できるのが特徴で、発見した腺腫をその場で治療(切除)することもできます。
組織検査(生検)
切除した病変を顕微鏡で詳しく観察し、悪性度を判定します。この結果から今後の治療方針を決定します。
CTコロノグラフィ(CT大腸検査)
特殊な放射線を使い大腸の3D画像を作成する検査です。大腸全体を観察・画像化できるという特徴がありますが、小さな病変を発見しにくく、仮に発見しても切除や組織検査はできません。
注腸造影検査
バリウムと空気を大腸に注入し、X線撮影で大腸の形状を観察します。大腸全体の形状を一度に評価できるため、大腸の狭窄や拡張などの構造的異常を評価するのに適しています。しかし、CTと同様に小さな病変の発見や切除、組織検査には対応できません。
※当院で行っていない検査が必要な場合は、提携先医療機関と連携して実施します
大腸腺腫の治療
内視鏡治療
病変部が小さく(一般的に2cm未満)、転移を起こしていなければ、内視鏡を用いて切除できます。症例によっては当院での日帰り手術も可能です。切除することで症状の原因となる腺腫を治療できるだけでなく、大腸がんの予防にもつながります。ただし、出血や穿孔(腸壁に穴があくこと)のリスクがありますので、適応は慎重に判断します。
外科手術
以下のような場合には外科手術を検討します。
- 腺腫の一部ががん化し、粘膜下層以深への浸潤が疑われる場合
- 内視鏡で一括切除が困難な巨大な腺腫や、広範囲に広がる腺腫の場合
- 内視鏡が到達困難な位置にある腺腫の場合
- 内視鏡治療後の病理検査で切除断端が陽性(腺腫が完全に切除されていない)と判定された場合 など
※提携先医療機関と連携して実施します
切除後の経過観察
大腸腺腫を切除した後も、新たなポリープが発生するリスクがあります。治療後も定期的に大腸カメラ検査による経過観察を行います。検査の頻度は切除した腺腫の数や大きさ、リスクにもよりますが、およそ1~3年に1回程度が目安となります。