バレット食道とは?

バレット食道は、本来の食道粘膜(扁平上皮)が胃の粘膜に似た組織(円柱上皮)に置き換わった状態です。食道の下部、特に胃との境界部分に生じることが多く、慢性的な胃酸の逆流(胃食道逆流症、逆流性食道炎など)による食道への刺激が原因となります。
バレット食道になっても自覚症状はほとんどありませんが、食道がんの発生リスクを高めるため注意が必要です。また、バレット食道では逆流性食道炎が慢性化していることも多いので、そちらの治療も重要となります。
胸焼けや胸の痛み、飲み込みにくさなどの症状がある方は、どうぞお気軽に箕面市・箕面萱野駅のながい内科循環器内科クリニックへご相談ください。
バレット食道の分類
LSBE
LSBE(Long-segment Barrett’s Esophagus)は、食道胃接合部から上方に向かって、食道の内側を覆う粘膜が全周にわたって変化し、その長さが3cm以上に及ぶ状態です。このタイプは食道がん(食道腺がん)の発生リスクが相対的に高く、主に欧米人に多く見られます。ただし、近年では日本でも徐々に増加しつつあります。
特徴
- 食道胃接合部から3cm以上の長さに及ぶ変化
- 全周性(食道の周囲全体に及ぶ)のことが多い
- 食道腺がん発生リスクが相対的に高い
- 欧米に多いタイプ など
SSBE
SSBE(Short-segment Barrett’s Esophagus)は、食道粘膜の変化が部分的で、その範囲も3cm未満の状態です。SSBEから食道がんが発生することは非常にまれですが、定期的な検査で進行を確認する必要があります。日本人のバレット食道の多くはこのタイプです。
特徴
- 食道胃接合部から3cm未満の短い変化
- 非全周性(部分的な変化)のことが多い
- 食道腺がん発生リスクは極めて低い
- 日本人に多いタイプ など
バレット食道の原因
逆流性食道炎の長期化
バレット食道の発生には、胃酸の逆流による食道の炎症(逆流性食道炎)が密接に関連しています。頻繁な逆流によって食道粘膜が繰り返しダメージを受けることで、それに対する防御反応として、本来の扁平上皮から胃酸に強い円柱上皮へ変化すると考えられています。
リスクを高める生活習慣
以下のような生活習慣は逆流性食道炎のリスクになるため、間接的にバレット食道のリスクを高めます。
- 肥満(特に内臓脂肪の蓄積)
- 高脂肪食の常習的な摂取
- 喫煙
- 過度のアルコール摂取
- 食後すぐの就寝
- 胃に負担をかける姿勢(前かがみの姿勢など) など
バレット食道の症状
バレット食道自体には特有の症状がなく、多くの患者様は無症状です。そのため、胃カメラ検査で偶然発見されることが一般的です。しかし、バレット食道に併発して逆流性食道炎を起こしている場合は、以下のような症状が現れることがあります。
- 胸焼け(胸部からのどにかけての焼けるような感覚)
- 呑酸(酸っぱい液体がのどの奥まで上がってくる感覚)
- 胸痛(特に食後や横になった時)
- のどの違和感や痛み
- 慢性的な咳
- 嗄声(声がかすれる)
- 飲み込みにくさ など
バレット食道の診断
胃内視鏡検査(胃カメラ検査)
鼻や口からカメラ付きの細いスコープ(内視鏡)を挿入し、食道の内壁を直接観察します。通常の食道粘膜はピンク色をしていますが、バレット食道では赤みを帯びたサーモンピンク色の粘膜が観察されます。
内視鏡に備わった様々な機能を駆使し、観察の角度や光の当て方、色調などを変えつつ、バレット食道の範囲やがん化の可能性がある部位を慎重に観察します。
バレット食道の治療
バレット食道自体に対する確立した治療法はありません。原因となる逆流性食道炎のコントロールと定期的な経過観察により、バレット食道の進行と発がんの予防を行うことが治療の目的となります。
逆流性食道炎の治療と管理
薬物療法
以下の薬剤を使って炎症や胃酸の逆流を抑えます。
- プロトンポンプ阻害薬(PPI)、H2受容体拮抗薬:胃酸の分泌を抑える薬
- 制酸薬:胃酸を中和する薬
- 消化管運動改善薬:食道や胃の動きを改善する薬
- 粘膜保護薬:食道の粘膜を保護する薬 など
生活習慣の改善
胃酸の逆流を起こす生活習慣を改善します。軽度であれば、生活習慣の改善のみでも逆流性食道炎を治療できることがあります。
- 適正体重の維持(肥満の場合は減量する)
- 禁煙
- 過度の飲酒を避ける
- 食事の工夫(脂っこい食事、辛い食べ物、酸性の強い食品の制限)
- 食後すぐに横にならない(食後3時間は起きておく)
- 就寝時の頭部挙上(枕を高くするなど)
- きつい衣服やベルト、腹部を圧迫する姿勢を避ける など
定期的な内視鏡検査(経過観察)
バレット食道と診断された場合、がん化の早期発見のために定期的な胃カメラ検査を。バレット食道のタイプや進行の程度によっても異なりますが、およそ1~3年に一度程度の頻度での検査をお勧めします。
異形成または早期がんが見つかった場合
バレット食道に異形成や早期の食道腺がんが見つかった場合は、内視鏡的粘膜切除術(EMR)や内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)などの内視鏡治療が考慮されます。早期発見・早期治療であれば、内視鏡治療だけで完治する可能性が高いことが知られています。